自走の兆し
最初の変化を感じたのは2010年の「ビアフェス」という、30~40社のクラフトビールメーカーが出店するイベント。その年、社員の1人が「もっと自分たちのビールを知ってもらい、ファンに喜んでもらおう」と社内に呼びかけたのです。例年は1~2人のスタッフで足りるところ、自ら手をあげた5~6人が企画、準備、運営のすべてを自主的に行いました。
単にビールを提供するだけだった以前とは異なり、ブース横にスクリーンを置いて製造工程の映像を流したり、本物のホップの香りを楽しんでもらったり…まったく違うサービスや体験を複数用意しました。すると、当日何が起きたかというと、我々のブースだけ長蛇の列ができたんです。他ブースの何十倍もビールが売れて、ファンも大喜び。何よりも、チームで成果を出すことのすごさにスタッフ自身が気づいた瞬間でした。
社員の自主性にゆだねる
社内の雰囲気もだんだん明るくなり、役職ではなく、ニックネームで呼び合う習慣が根づきました。また、チームビルディングを目的とした新人研修も始めました。「面白い名刺をつくって」とか「醸造所を訪れた人がワオ!と感動するしかけを考えて」といったお題を出し、それを新人チームだけで解決する体験を通じて、チームで働くことの楽しさや意義を知ってもらい、各人の個性と成長を促すのです。実は、いま一番注目されている「超宴(ちょううたげ)」というファンイベントも、新人研修のお題から生まれたものです。
最初は2010年。私の主導で、ファン向けのビールイベント「宴(うたげ)」を何度も開催するようになり、次の大きな目標として「2020年にドーム縦断ツアー開催」と掲げました。その実現のためには40~200人規模の「宴」では足りず、2015年までに1000人規模のイベントをやっておく必要がある。そこで、2013年の新人研修のお題は「1000人規模のファンイベントを企画せよ」となったのです。
新人研修のように、チームビルディングをメインの目的に据えたプロジェクトは、期限やコストの制限は設けません。いつまでに何をどれだけやるか。すべてスタッフの自主性にゆだねます。そして社長である私は介入せず、グッと我慢。これがチームづくりにはとても重要なのです。
チームの成果「超宴」
最初の「超宴」は、2015年。お題を出してから2年後に実を結び、500人が参加する大成功のイベントとなりました。2年間さまざまな苦労を乗り越え、モチベーションを保ち続けたスタッフを思うと、閉会式には涙が止まりませんでした。
その後もファンの和を広げるため、年々規模を拡大して2016年は1000人、2017年は4000人、2018年は5000人規模で「超宴」を開催(今年は台風19号の影響で中止)。毎回大赤字ですが、このイベントに関しては、短期的な売り上げ・利益は捨てて、お客様の圧倒的満足と感動だけをひたすら追求します。ファンの方々が圧倒的に満足・感動し、ずっとよなよなエールのファンでいてくれることが大事だからです。
チームビルディングに注力した当初3年間の業績は対前年比2~3%の微増でしたが、それ以降は毎年40%増。よく「業績がいいからユニークなことができるんだ」と言う人がいますが、私は売り上げといいチームづくりは両輪だと思っています。時間がかかって大変だけど、両輪が回り出したらあとはスタッフが自分たちで決めて、自分たちで走ってくれる。「任せる」ことができるようになったのも大きな変化です。
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