クラフトビール「よなよなエール」で知られるヤッホーブルーイング社長の井手直行さんが、12月17日の「住宅産業大予測フォーラム2020」に登壇する。同社は、ホームページやメルマガ、40~5000人規模のイベント「宴」「超宴」などさまざまなツール・機会を通じてCXを提供して熱狂的なファンをつくり、競争が熾烈なビール業界で成長してきた。CXは1~2人のスタッフや一部の部署で行っても成果は出ない。「必ず全社で」が基本だ。2008年に社長に就任した井手さんは、スタッフの無関心や反発にあいながら、スタッフ一人ひとりの個性とやる気を引き出す「チームビルディング」に活路を見出す。得られた成果の大きさは計り知れないという
株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長
1967年生まれ。福岡県出身。国立久留米高専電気工学科卒業。大手電気機器メーカーにエンジニアとして入社。広告代理店などを経て、97年ヤッホーブルーイング創業時に営業担当として入社。2004年楽天市場担当としてネット業務を推進。看板ビール『よなよなエール』を武器に業績をⅤ字回復させた。2008年より現職。全国400社以上あるクラフトビールメーカーの中でシェアトップ。14年連続増収増益。著書に『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります』(東洋経済新報社)
90年代後半に巻き起こった地ビールブームが去ると、ヤッホーブルーイングは長い「冬の時代」に入りました。この低迷から抜け出したきっかけは、2004年に取り組み始めたインターネット通販です。個性全開のホームページやメルマガで少しずつ「よなよなエール」のファンが増え、売り上げが回復。でも、忙しいのは私と中途で入った通販専任スタッフの2人だけで、社内の雰囲気は最悪。製造・出荷対応をお願いすると「井手が勝手に頑張るから残業が増えた」と迷惑顔でした。
だれも賛同も協力もしてくれない
業績は上向いている。でもネット通販の好調はいつか終わる。いま「成果が出る組織」に変わらなければ、これ以上の成長はないし、会社の存続も危うい。そこで2008
年、社長に就任した私は、みんなが力を合わせて頑張れる組織づくりに乗り出したのです。でも失敗の連続でした。たとえば、「お通夜みたい」と言われるほど暗かった朝礼を変えようと、一人ひと言を提案しても「特にありません。通常業務です」だけ。みんな露骨に「社長面倒くさい」という雰囲気を出すので、途中でめげて断念してしまう。この繰り返しでした。
社内のマインドチェンジのためにあらゆることを試みましたが、だれも賛同も協力もしてくれない。指示した仕事は淡々とやるけれど、自発性がない。複数人にプロジェクトを任せても一向に進みませんでした。
生き残るには「チーム」しかない
我流での手詰まりを感じた私は2009年、楽天大学が主催する「チームビルディング研修」に乗り込んで、チームづくりとは何かを体験しながら学びました。そこでの経験は「人生の転換期」と言い切れるほど、衝撃的なものでした。理想のチームは、1+1=2じゃなく3にも4にも、予想をはるかに超えた成果が出せることを身をもって知ったからです。
早速、社内に持ち帰ってチームづくりに着手。7人が研修に参加したいと手をあげてくれました。けれども、夏の繁忙期に社員20人中7人が業務を抜けて研修をするわけですから、残った社員の怒りや反発はかなりのものでした。
社内に混乱と犠牲をもたらしましたが、やめるわけにはいかなかった。会社にはいまチームがどうしても必要だし、これで成果が出なければクビを覚悟していたからです。
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