新建ハウジングプラスワン2011年10月号では「住宅ネットワーク2011」と題し、住宅ネットワークの現状とこれからを追いました。基本は、住宅ネットワーク本部にアンケートを依頼しその回答を編集部で編集したもので構成しています。ここではこの特集の巻頭言を掲載していきますが、以下はその4回目です。1回目はこちらから、2回目はこちらから、3回目はこちらからご覧下さい。
4 転換期の住宅ネットワーク
山積する課題
工務店間の受注格差が開き続けるなかで3・11(東日本大震災)が起きた。生活者の価値観は変化し、スマート化をはじめ家づくりのトレンドも変わってきた。そこに世界不況、消費税アップ、若年層市場の縮小・予算低下—といった課題が重なっていくことになる。
ただ、こうした変化のときは、住宅ネットワークの存在意義・価値が高まるときだ。
原点回帰を
いま、住宅ネットワークに必要なのは「原点回帰」だろう。
そもそもを言えば、工務店単独では解決が難しい課題に、スケールメリットを生かした解(ソリューション)を提供するのが住宅ネットワークの原点であり、本質的な価値だ。
具体的には、
1 信用力・ブランド力の提供
2 新技術の開発・提供
3 資材の開発・提供
4 住宅商品開発・提供
5 ビジョンの共有・仲間づくり
5 教育・ベンチマーキング
が住宅ネットワークの原点・本質的な価値であり、これらを強化することで、本部・会員ともに地力を再構築し、「強い集団」を目指したい。
オープン化の可能性
地力を再構築したうえで、転換期に求められる新技術・新商品を開発・提供する。その際は住宅業界以外の人・企業とのコラボレーションが重要になるだろう。
すでに家づくりはライフスタイル産業、環境産業、そして教育産業などと重なってきている。こうした住宅産業の「外」と住宅産業の「内」の重なるところに新技術・新商品のタネがある。
そうして開発した新技術・新商品については、ネットワークの外にもオープンに供給していくことも、この転換期ならではの方向ではないか。いい技術・いい商品なら、オープンに普及を図るのが本筋と言えば本筋だ。
もちろん既存会員の不満を招くため、ハードルは低くない。だが、段階的にでも検討すべき将来像ではあるはずだ。
新しいモデル
ネットワークとしての原点・本質的価値の強化を図る一方で、オープン化を進める—。細い道ではあるが、転換期である今こそ、そのチャンスのときだ。
原点・本質的価値の部分についても、資材調達や教育、プロモーションなど、ネットワーク単独では荷が重くなってきている、もしくはスケールメリットが有効な分野では、積極的にネットワーク同士の協業を進めるときではなかろうか。
今後は、最初からオープンを志向するネットワークも登場するだろう。ネットの世界ではアップル以外はオープン戦略があたり前になっており、アップルもプラットフォームを提供しそこに様々なソフトメーカーやコンテンツ会社が乗れる仕組みを構築している。
同様に、住宅商品の設計コードや仕様など基本的なノウハウはネットなどで公開し、その設計・施工指導などで収益をあげていくモデルもありうるだろう。メーカーとして工法や資材を供給しながらゆるやかな会員化を図り、会員間の情報共有や教育などで一部分のソリューションを提供していくモデルもありだ。
住宅ネットワークが参加できるプラットフォームをマーケティングや資材供給、設計、金融、エネルギー、中古住宅通などの特定分野で提供する、「ネットワークをネットワーク化する」企業も出てくるだろう。
その5につづく。
その1はこちらから、その2はこちらから、その3はこちらから。
※住宅ネットワーク本部へのアンケート結果は新建ハウジングプラスワン2011年10月号に掲載しています。読者以外の方で内容をご覧になりたい方は[試読制度]をご活用ください。
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