新建ハウジングプラスワン2011年10月号では「住宅ネットワーク2011」と題し、住宅ねとワークの現状とこれからを追いました。基本は、住宅ネットワーク本部にアンケートを依頼、その回答を編集部で編集したもので構成しています。ここではこの特集の巻頭言を掲載します。アンケートの回答から見えてきた住宅ネットワークの現状とこれからを整理し、その活用術を解説したものです。
1 省エネ化・再生可能エネルギー・スマート化でどう差別化するか
「3・11」後の価値観や住宅ニーズの変化を、ネットワーク本部としてどう受け止め、支援内容に反映し、会員に提供しているか—今年度のアンケート調査はそれをつかむことに主眼をおいた。
その視点でアンケート結果を見ると、まず目立ったのが省エネ化/再生エネルギー活用/スマートハウス化に関する支援の強化で、特に太陽光発電については多くのネットワークが支援を充実していた。
省エネ化
今後の省エネ化支援については、前田[新]国土交通大臣が就任以降続々と打ち出している省エネ基準適合義務化や省エネ評価制度・新省エネ基準の構築などの省エネ施策の動きをいち早くつかみ、その対応策を打ち出すことが、特に省エネ対策を強みとするネットワークの場合ポイントとなる。
ただし、省エネ基準適合義務化に向けて「みんな省エネ」になっていくと、省エネ対策で差別化するなら、さらなる高性能化を目指すことになる。
そうすると、コストはアップし、生活者への説明も難しくなる。高性能化とコストをバランスする技術やそのための工法・資材の提供、分かりやすい説明の物差しの提供が本部の課題となる。
一方で、今後省エネ適合義務化に向けつくり手の教育・技術取得支援施策が打ち出されるとみられ、省エネ対策を強みとしないネットワークは、そうした補助施策を活用して会員のスキルアップを図るといいだろう。
再生可能エネルギー
再生可能エネルギーについては、地熱エネルギーの活用も始まっているが、太陽光/太陽熱が今後も本命だ。
太陽光の競争力としては、1コスト2施工性+正しい施工3発電性能+その持続—の3点が挙げられる。
これらはネットワークのスケールメリットを生かせる部分だ。ネットワーク同士でアライアンスを組んでロットを揃え、施工/アフター体制を整備していくのも一手だろう。
太陽熱については、「給湯・暖房にはできる限り自然エネルギーを使おう」という提案を、太陽電池に疑問を持つ層・パッシブ志向層に向けて強化し一定の顧客層を確保しながら、太陽光とのハイブリッド化を模索する、という方向か。
この細い道の開拓は工務店1社では難しく、本部がそのビジョンを示し上手く舵取りをすれば、本部の求心力は高まるだろう。
地熱活用は現状、地中の一定温度を利用して暖冷房負荷を減らす、という補助的な使い方が中心。取り組みが少ないぶん差別化にはなるが、普及には時間が必要なように見える。
スマート化
ハウスメーカーが異業種とのアライアンスでスマートハウスの取り組みを加速、住まい手の注目度も高まっている。
そのなかで本部としても、スマート化というトレンドに追随するか、するならどことどう組み、会員をどこまで支援するのかが問われている。
太陽光発電や蓄電池など設備単体は工務店単独でも調達できるが、電気自動車との連携やこれらを統合してエネルギーを見える化/制御する「HEMS」などの調達・システム化は難しい。また、導入世帯が増えれば、HEMSからデータをサイトに自動集約して省エネ競争を行ったり、排出権取引につなげるなどメリットも打ち出せるようになり、ネットワークのスケールが生きる。
多くの自治体が計画している「スマートシティ」に、ネットワークとして関わりながら会員の参加を支援していくのも一つの方向だ。
※住宅ネットワーク本部へのアンケート結果は新建ハウジングプラスワン2011年10月号に掲載しています。読者以外の方で内容をご覧になりたい方は[試読制度]をご活用ください。
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