ANP(曽山英一社長、東京都新宿区)ではこの春、工務店を対象にした「ANP構造設計・構造計算センター」をオープンした。ここではクラウド上で構造計算図面などの打ち合わせができる発注管理システム『クラウドDシステム』や現場監督の業務を代行できる工務管理システム『OAB』のサービスなどを通じて、強力な工務店支援が可能となった。曽山社長に両システム活用による効果等について話してもらった。
曽山 英一 氏
ANP 代表取締役社長
15年間、木造住宅構造設計CADおよびプレカットCADの開 発・サポートを手掛けた経験をベースに、工務店など住宅会社 に特化して建築ITなどさまざまなシステム開発を行う。3月か らは自社開発の構造設計CADを用いて、構造計算を引き受け る「ANP構造設計・構造計算センター(木造住宅在来工法・ 金物工法・2×4工法/戸建・集合住宅)」を開設した。
熊本地震で認知された 「耐震等級3」
2016年4月に発生した熊本地震では、前震と本震といわれる2度にわたる震度7の地震動に見舞われ、一部損壊まで含めると約19万棟の大きな建物被害がありました。
当時、熊本県益城町中心部で行われた建築物の悉皆調査で明らかになったのは、現行の耐震基準である 2000年以降の基準で建てられた住宅にもかかわらず倒壊・崩壊の被害率が6%あったこと。これに対して、住宅性能表示制度の「耐震等級3」の住宅では倒壊・崩壊がありませんでした。ほとんどが無被害か小破ないし軽微な被害でした。さらに、その後の調査で分かってきたことは、全壊を免れたとしても、半壊(または一部破損)と判定された住宅の多くが建替え等によって住宅としての寿命を終える結果になったことです。
ここからわかることは、「耐震等級3」の住宅は、命を守るだけでなく、住宅という財産を維持し「住み続けることが出来る」という新たな住宅性能の基準として認知されたのです。当時、現地の調査に当たった京都大学生存圏研究所の五十田博 教授は「耐震等級3レベルの安全性を満たした住宅が増えることが期待される」と話しています。
「4号特例」「耐震等級3相当」 では通用しない時代に
ご存知のとおり「耐震等級3」とは、建築基準法が求める耐震強度 の1・5倍の強度のことを言います。 最近は、多くの工務店が「耐震等級3相当」をうたい文句にしていますが、それは、あくまで自主基準であり、各会社によってあいまいな状況といえます。やはり、性能評価機関による「お墨付き」がお施主様に とって一番の安心です。
カラーベストなどの屋根材を始め住宅の軽量化が進んでいる中で、どうしても4寸角の柱にこだわる必要 はありません。熊本地震では、地元 の熊本杉の太い柱を使ったにもかかわらず倒壊してしまった住宅を目にしてきました。木材の量は耐震性能に必ずしも関係しないのです。「耐震等級3相当」はもはや通用しない時代が来ています。
間取り変更なし、材積減少でも 「オール耐震等級3」を実現
これからの工務店の進むべき道は、プロとして安心して住み続けることが出来る住宅を実現することにあります。ANPでは、高度な構造設計技術があり、ほとんどのケースで間取り変更なし、または材積を減少させても「耐震等級3」を実現しています。
ANPでは今年3月に、構造設計・構造計算センターを社内に開設しました。 工務店の意匠データをインポートし、CEDEXM(シーデクセマ)ファイル等 (またはCADの貸し出し)を使い自社開発の構造CADへ取り込むことで、「許容応力度構造計算書、構造伏図一式の納品サービスの効率化」を実現しています。クラウド上で関係者が打ち合わせ可能になったことで、一般的には2週間~1ヵ月を要する作業を3日から7日に短縮できるのも大きな強みです。
全ての住宅で構造計算を実施し「耐震等級3」の住宅を標準化することができる。このシステム導入は、これからの地域工務店が大手住宅メーカーに対抗するうえで大きな自信につながると確信しています。(談)
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