鈴木 岳紀氏
コスモホーム (愛知県名古屋市) 代表取締役
コスモスタイルの住宅事例
コスモホーム社長の鈴木岳紀さんは、生産性向上や効率化には業務や商品(住宅)の“標準化”が必須と考える。鈴木さんによると標準化のゴールは「利益率の確保」だ。住宅の平均単価が下がる中でも利益をキープするために標準化が効く。「利益がなければサステナブルな経営はない」と鈴木さんは力を込める。
同社は、標準化の一環としてチームごとに担当棟数を設けながら、安定経営につなげている。同社では営業・設計・施工による3人のチームが年間に手掛ける棟数を10棟と決めている。これは特定のスタッフに依存しないという同社の経営方針の表れでもあり、「誰でもできる」社内体制こそが経営を安定させるという考え方がベースとなっている。
同社では、このチーム制を有効に機能させるために、特に社員教育とチームづくりに力を注ぐ。例えば その一つが、小さい規模の会社でもスタートさせやすい月1回の幹部会だ。鈴木さんや設計、営業、施工および経理の幹部が定期的に顔を突き合わせ話し合いを行うことで、考えを共有している。
プランを限定し、価値観の合う顧客に的確に訴求 している点も標準化の効果の表れだ。「コスモスタイル」と呼ばれる家づくりでは、2180万~2900万円までの価格帯の住宅プランと規格住宅を合わせた計9種類のラインアップを用意。顧客の予算を踏まえたシンプルな商品構成が、営業的な強みになっている。
一定の集客と成約数を実現している理由は、トレンドとニーズを照らし合わせてプランを決め、ブラッシュアップしているところにある。「常にプランと顧客(ニーズ)がマッチするかを見ている」と 話す鈴木さんは、平均予算が低下する中でプランが小型になれば、それに合わせてキッチンとダイニングの距離を調整するといった、きめ細かな対応をとっている。
会社プロフィール
会社紹介/チームによる担当棟数と、社員教育によるチームづくりを根幹にした社内体制で安定経営を実現している工務店。限定したプランの中で、価値観の合う顧客にどう訴求しているのかにも注目したい。
社員数/10人
年間新築件数/新築25~30棟ほか
古川 和茂氏
ディテールホーム (坂井建設・新潟市)
マーケティング部・WEBディレクター
データを分析して最適化、効率的な業務を目指している
「将来的には、業務のすべてをペーパーレスにして、社員と職人の負担を軽減したい」。ディテールホームでWEB担当・マーケティングディレクターと して手腕を振るう古川和茂さんは、そう話す。古川さんは、業務を効率的に行い、社員の負担を軽減す るための仕組みづくりと標準化に取り組んできた。
顧客情報を生かした営業のシステム化も、その一つ。最初に直面した課題は「とにかくデータがない」ということだった。「当時導入していたCRM(顧客管理システム)が使いにくく社員が必要最低限でしか利用できていなかった。そのため顧客とやり取りしてもデータが蓄積されず、(マーケティングのための)分析ができなかった」と振り返る。
そこで、直感的に使いやすくデザインされたCRMに 変更したところ、すぐに活用されるようになったという。蓄積されたデータをもとに、エクセルも使いながら分析、「どのような顧客に対し、どのような商品だと成約率が高いのか」といった傾向を導き出す。現在は、その分析結果をもとに広告運用の最適化などにも取り組む。大手住宅サイトでも新潟県内閲覧数トップを記録しており、3年前に比べると問い合わせ数は約10倍になっているという。
現場の効率化も進める。古川さんは「住宅業界でアナログ的な感覚は根強く、例えば現場監督と職人が電話で話す必要がない案件でも、いちいち電話で会話をしている」と指摘。そこで自社の社員と職人との コミュニケーションをスマホを使ったシステムにより効率化した。職人による活用を促すために、安全大会を開催して説明会を実施。導入後は、システムを使いこなせている特定の社員と職人の事例をモデルケースとして示しながら、他の社員や各業種の職人たちに浸透させていった。「便利そうだな、使ってみようかなという雰囲気づくりが大切」と古川さんは話す。
会社プロフィール
会社紹介/地場中堅ゼネコンとして歴史を持つ一方、高い施工力と集客力のあるデザインで近年は住宅事業が成長を牽引する。社員数も増加し新潟県内で多店舗展開する中で、標準化やツール導入を進めている点に注目だ。
社員数/78人
年間新築件数/新築170~180棟ほか
飯田 亮氏
飯田亮建築設計室+COMODO建築工房 代表
飯田さんの住宅事例。施主が「これでいい」と納得して依頼を決めるという
設計事務所である飯田亮建築設計室と工務店であるCOMODO建築工房の代表を務める飯田亮さんは、今の施主が求めているものは、「空間としての豊かさとそれを実現するデザイン性」と話す。「自分たちの暮らし方がイメージできることが重要になってきている」と強調する。
同社の家づくりは、材料としては自然素材にこだわりを持ちつつも、それ自体をことさら目立たせるのではなく、素材自体の特性を生かしながらも、「何もない」くらいシンプルに全体を整えるのが特徴だ。飯田さん自身、素材としての木には多くの魅力があるとしながらも、「ただ木の家だからいいというのではなく、木を使うことで得られる効果を踏まえて、次の提案をしていく必要がある」と強調する。
空間全体の居心地の良さを求める施主からの共感が強くなっているというのが、飯田さんの実感だ。
飯田さんが意識しているのは、自分たちの提供する家づくりを、本当に求める人にきちんと届けること。「ホームページの事例やブログで、暮らし方のイメージを持ってもらえるように、事例画像や言葉を選んで伝えている」。
たくさんの人に伝わらなくても、自分たちの家づくりの姿勢に共感してもらえる人に伝わるように、しっかりと伝える。「これでいい」と飯田さんの提案する空間に納得して、依頼する人が増えているという。それが評判になって、次の仕事へとつながっていく。施主とつくり手が、「らしさ」でつながっていく—それが、飯田さんの流儀だ。
会社プロフィール
会社紹介/設計事務所+工務店という空間づくりを特徴にしている。きちんと設計するプロダクト住宅というコンセプトの家づくりなど、ものをつくるという姿勢が企業ブランドの核になっている
タブチキヨシ氏
モンタージュ・ライフスタイルラボラトリー 主宰
「歴史的にみると、家づくりは、人を迎えいれる空間から家族が集える空間という価値観が強くなり、応接室がなくなり、よりプライベートなLDK一体型の空間が主流になった。今そこから“私らしい暮らしができる空間”へという大きな価値観の変化を感じる」
タブチさんは、暮らしが楽しくなるような間取り図を多数、インスタグラムにあげているが、その間取りへの反応から、特に働く女性が、「家族のため」というだけではなく、自分が楽しめる空間をつくりたいという意識が強くなってきているという。
夫婦ともにフルタイムで働いていても、女性のほうが家事負担が大きくなりがちという現実があり、外での仕事だけでなく、家での仕事からも解放されたいというニーズが出てきているというのがタブチさんの見立てだ。
建材メーカーの「塗る扉」がヒット商品になるなど、「DIY」の流れも「個」の価値観の追求のひとつの表れでもあると分析する。
会社プロフィール
会社紹介/多分野へトレンドを企画・発信する集団MONTAGE(モンタージュ)とタブチキヨシ氏が連携して、地域建材商社をハブとして、工務店がトレンドを中心に学ぶ勉強会を展開する
松下 勝久氏
木のいえ一番協会 ログハウス普及部会長
ログハウスの事例(アールシーコア「BESS」)。暮らし方をイメージしている施主が多い
「北欧のようなゆとりのあるライフスタイルや薪ストーブなどの火のある暮らしなどへのあこがれから、家を持とうと思っていなかった人が、暮らしの道具としてログハウスを選ぶという流れが若い世代にも見られるようになった」
モノを所有したいという欲求から、楽しく豊かに暮らしたいというように、生活者の意識が変化するなかで、ログハウスに対する意識も変わってきているという。
縮小が予想される住宅市場において、自分らしい暮らしをしたいというニーズの本質をくみ取れる事業者が未来を切り開いていける。
渡辺 洋一郎氏
坂井建設 (大分県大分市)i-DEAR事業部マネージャー
各事業部横断で構成する「IT促進委員会」は週1回開催。各部署の代表者から「枝分かれ方式」で部署内に落とし込まれる
坂井建設i-DEAR事業部マネージャーの渡辺洋一郎さんは今後、「働き方デザイナー」としての活動を本格化させる。自社の実績やノウハウを生かして、他の地域工務店の支援にも乗り出す考えで「工務店業全体の働き方の概念を変えていきたい」と意気込む。
働き方に対する「概念の改革」を全社員で行い、常態化していた長時間労働を是正し、それによる大幅な生産性向上を実現した同社の取り組みの中心的な役割を担ったのが渡辺さんだ。
改革前の2017年の残業時間・月平均48時間に対し、改革後の18年4月は36時間を切り、さらに同年8月に は30時間を下回った。残業時間が最長だった17年9月の50時間に比べ、約40%も減少した。社員1人当たりの年間労働時間が17年7月時点の約3100時間から18 年同月には約2600時間まで減少しているにもかかわらず、年間売上高は17年の14億5000万円に対し18年は 14億6000万円と増えた。渡辺さんは「労働時間が減ったのにも関わらず売り上げが増加しているのは生産性が向上した証」と説明する。今年については計測中だ が、いまのところ労働時間は前年度並みなのに対し、売り上げは増加する見通しだ。
同社は社内の全職種でITを活用し◇ものを探す時間◇移動時間◇書類作成時間◇会議時間―を削減。1時間当たりの生産性(利益/時間)を向上させ、利益に直結する「フロントオフィス(営業活動、顧客と直接対話する業務)」に充てる時間を増やした。
渡辺さんは「ツールやシステムを全社的に浸透させ、全体のパフォーマンスを向上させることが大切」とポイントを指摘する。同社ではツールの運用 を全部署で標準化するため2017年11月に「IT促進委 員会」を設置。各部署の代表1人が、週1回開催の勉強会に出席し、そこで学んだことを自部署に落とし込む形で、ITリテラシーの低い社員に対しても目的やツール操作について丁寧に伝えた。
濵松 和夫氏
浜松建設 (長崎県諫早市) 代表取締役
ITツールによる業務効率化は「目的ではなく手段」(濵松さん)。情報共有が進むことで生産性が向上し、 それによって顧客と直接対話する時間を増やすことで、「結果的に顧客満足度を上げることにつながる」ことが 最終的なゴールだ。
ITツールにより全職種で一律に情報共有を標準化することで、社内 の“情報格差”を解消
ITツールで働き方も変わった。社員がパソコン、スマートフォン、タブレットにより、クラウド上で必要な情報や資料を共有し、日報も管理。濵松さんは「施工管理や取引先への発注・請求・支払、引き渡し後の顧客管理など、ITツールで一元管理することで圧倒的に労働時間が減り、働き方を変えることにもつながった」と話す。今年8月、九州北部を襲った猛烈な雨で、本社がある諫早市一帯が一時停電した際には、社員がそれぞれインターネットでクラウドにアクセスしながら、在宅で滞りなく通常業務を進めたという。
IT化により、精度の高い顧客管理の仕組みも構築し、見込み客などを対象に独自のランク付けも行う。 例えば展示場に来場した顧客で、アポイントは取れていないが、アンケートの回答率が高く、「一定の見込みがある」と判断すれば、ランクアップさせるといった具合に基準を定めている。土地探しやリフォームについても独自の基準を設置・運用する。
牧野 正一氏
スムース (滋賀県草津市) 専務取締役
スムースマルシェの様子。人気店の“ファン”がさらに人を呼び、スムースの存在がマルシェを通じて価値観を共にする層にどんどん広がっていく
1日で最大1500人の来場者を集めることもある地域の人気イベント『スムースマルシェ』など、徹底したペルソナ分析により導き出したサービスの提供により、OB顧客のみならず潜在顧客とも深いつながりを持つスムース。そんな同社の“トレンドハンター”として、マルシェを運営しながら、自社の価値観を伝える活動やスキーム構築を担うのが専務の牧野正一さんだ。
同社のコンセプト「何でもない、でも大切な日。」は、「日々の暮らしが少しでも優しくなるようなきっかけづくりを行いたい」という想いから生み出された。このコンセプトを具現化するために、2014年の事務所移転を契機に始めたのが、月1回・第1日曜日に開催するマルシェだ。「人と人との手から手へ、暮らしに関わる安心・安全なものを地域に届けたい」という想いに共感した無農薬野菜を栽培する農家や、オーガニックフードを提供する店など20店舗ほどが、同社の事務所兼ショップや駐車場に軒を連ねる。
出店料は無料だが、だれでも出店できるわけではなく、新たに出店を依頼する人(店)は厳選する。出店までのルートは、既存の出店者やOB顧客の紹介か、牧野さんをはじめとする同社スタッフが自ら探して“確かな人(店)”だと確信した上で、直接出店を依頼する場合のみ。イベントのメインの目的を集客や売り上げとせず、「安心・安全なマーケットを地域に提供すること」と明確に定めているからこそ実現できる仕組みだ。
マルシェを通じて広がった共感の輪は、結果的に集客にもつながる。2018年度に新築成約した顧客の“スムースを知ったきっかけ”では「マルシェ来場・OB顧客からの紹介」が75%超を占める。牧野さんは今後も「ペルソナの家づくりフローの中に、スムースの数々のコミュニティーが存在する」ことを前提に、社内体制の構築やスキームデザインを進めていく考えだ。
会社プロフィール
会社紹介/2006年設立。<何でもない、でも大切な日。>を合言葉に、ペルソナの問題解決を常に想像した経営を展開。「スムースマルシェ」「暮らしを楽しむ会」などを定期開催しながら、家族の暮らしが優しくなるきっかけをつくっている。
社員数/役員2人、社員5人,パート5人
年間新築件数/新築15棟(リフォーム工事別途有)
基本情報(年間売上、平均単価など)/平均単価:75万円〜/坪、年間売上:4億7000万円
東 沙織氏
ひまわり工房 (兵庫県相生市) 広報設計士/取締役
実際の「暮らしの知恵ネタ」インスタグラム投稿。思わず見たくなる写真コメントと共に、住まいづくりに役立つ解説をさくっと読むことができる
約4万4000人のフォロワーを持つインスタグラムなどのSNSを軸に、自らを“あずさん”という「住まいづくりのタレント」としてセルフプロデュースする、ひまわり工房取締役の東沙織さん。毎朝8時ごろに欠かさずアップする「暮らしの知恵ネタ」投稿を心待ちにする“あずファン”は多く、時に1000超の「いいね!」を獲得するほどの人気を博す。
暮らしの中の気になるワンシーンを切り取った写真に、“あずさんらしさ全開”の一言を添える投稿について東さんは「SNSが当たり前の今、ただきれいな家の写真を見ただけではユーザーは驚かない。投稿は自社の世界観だけでなく、人間味もあぶり出されるような“人(ひと)感”のにじませ方が大事」と語る。
毎週金曜午後10時に配信するインスタライブも好評だ。配信時間帯は「共働き夫婦がゆっくり見られるように」と設定。リアルタイムのコメントのやり取りが「打ち合わせの疑似体験のよう」と人気で、配信開始から24時間経過後には5000人が視聴する。自社の顧客のほとんどがインスタグラムを見た上でアプローチしてくるという。
そんなSNSで人気の東さんだが昨年末から、完成見学会やDIYワークショップなどのリアルなイベントを月1回ほどのペースで開催している。SNSは拡散力が高い半面、それによって商圏外からも増える「確度の低い」相談や問い合わせへの対応が工務店にとっては悩ましい
ところだが、東さんはSNS上でのやり取りを通じて、「自社が商圏として定める半径25㎞のほんの一歩先に、実は潜在顧客がたくさんいる」ことを発見した。地域に向けたイベントにより、そうした潜在顧客も呼び込み、つながりを深める。ミライセッションでは、SNSを追求してきたからこそ見えてきた“あずさん流”工務店広報術をあますところなく伝える。
会社プロフィール
会社紹介/1991年設立。設計士と顧客との対話を大切にする家づくり手法を軸に、家族の成長や暮らしになじむ動線設計「成長が止まらない家」を手掛ける。暮らしのアイデア満載のインスタグラムやブログが人気。
社員数/4人(パート含む)
年間新築件数/新築7〜8棟
基本情報(年間売上、平均単価など)/平均単価:50万〜59万円/坪、年間売上:2億円
永森 幹朗氏
永森建設 (福井市) 副社長
暮らしを楽しむアイデアがつまった永森建設の住宅
永森建設が福井県内の新築顧客のニーズの変化に合わせて、自社の住宅を大きく変えたのは8年前だ。それまでは、大家族の2世帯住宅がメインで、新築契約の顧客の大半が50~60代の親世帯だったという。そのため建てる住宅は、70~80坪と大ぶりな「数寄屋造りの純和風住宅」が自社の看板商品となっていた。
「それが受注が少なくなっていった」と同社副社長の永森幹朗さんは振り返る。理由は、2世帯住宅が減少したてきたことと、新築の契約者が2世帯住宅の場合でも親世帯から子世帯へと移ってきたためだ。「純和風では、子世帯の奥様のライフスタイルに合わなくなってきた」と永森さんは説明する。そうした状況から、30代の子世帯のニーズをつかめる住宅づくりにシフトチェンジ。それまでメイン商品としていた50~60代向けの高級和風住宅「季尽木」から、30代向けのスタイリッシュな住宅「ネスト」へと主力住宅の軸を変えた。
永森さんは、方向性を大きく変えるにあたり、「従来の自分たちがつくりたいものを施主に押し付けていたプロダクトアウト的な考え方から脱し、施主が求める家づくりを模索するマーケットイン的な考え方が浸透する会社体制に刷新した」と話す。「自分はすでに40代で、20~30代のライフスタイルがわからないので、若い社員の発想が必要だった」という永森さんは、メインターゲットとして想定する30代子世帯の妻の希望を取り入れた住宅づくりを推進するため、各部署に必ず女性スタッフを配属。それにより、女性が働きやすい職場環境の改善や福井で働くための応援サイト「くらしくふくい」を立ち上げ「女性に寄り添う」というイメージを持たれるようなブランド戦略を推進した。
「変えてはいけない事以外はすべて変えればいい」を合言葉にチャレンジを続けている。
会社プロフィール
会社紹介/1990年12月設立。「お客様が心より誇れる住まいを」を理念にロングライフ住宅を提供。1990年12月にふくい建築賞2015受賞。2016年2月に福井県より子育てモデル企業に認定。2016年にふくい女性活躍躍進企業に登録。第1回ふくいグッドジョブ女性」に表彰される。2016年3月に定額制注文住宅「ながもり木箱」を発表。
社員数/70名
年間新築件数/53棟
基本情報(年間売上、平均単価など)/新築:19億円 リフォーム:10億円 その他:1億円 合計30億円 平均金額 約3500万円
加藤 渓一氏
HandiHouse project ハンディハウスプロジェクト (神奈川県横浜市)
「せっかくなので家族でDIYに挑戦し、子どもに家づくりの思い出を残せれば」というプロジェクトオーナーによるフローリング貼り
ハンディハウスプロジェクトは、関東圏のマンションや賃貸住宅、戸建住宅の施主に対し、「妄想から打ち上げまで」をコンセプトに、間取りのプランニングから素材選び、工事の過程まで、住まい手となる施主が参加するワークショップ形式の家づくりを行っている。
同社の加藤渓一さんは、「ハウスメーカーや分譲住宅会社、リフォーム会社などどこに相談しても、どれも画一的でワクワクしなかったという理由で当社に相談に来る施主が少なくない」と説明。中古住宅でも構造がしっかりしていれば、リノベーションをして住むことにアレルギーを感じない人が都会では増えており、同時に「従来型の規格化された安い住宅で、自動的に決められた間取りやオプションからしか選べない“自分らしさ”にフラストレーションを感じている現状がある」とする。
一方、つくり手側にも、住宅部材のクオリティーを上げてきたものの、顧客がついてこないという現実に流され、「つい、当初は手入れがいらず傷はつかないが、時間がたつと見栄えが悪くなるような建材ばかりを使ってしまい、つくり手の誇りやワクワク感を失ってしまっている」という実態があると加藤さんは指摘する。
そこで同社が提案するのが、「みんなで一緒にライブのように楽しむ家づくり」だ。設計プランも使う素材も、全てを住まい手と直接話し合って決める。住まい手の言う通りにつくるのではなく、つくり手の思いも伝えて、お互いぶつかり合いながらつくっていく。住まい手のライフスタイルに沿った住まいを、施主とつくり手がともに「自分ごと」として、ワクワク・ドキドキしながら最高のものを目指す。今年5月にはコミュティサービス「HandiLabo」をオープンし、住み手の人たちとコミュニケーションをとりながら行う家づくりの実験、実践を開始した。
会社プロフィール
会社紹介/合言葉は「妄想から打ち上げまで」。家づくりというライブを、一緒に楽しみ尽くす。その先には、住むほどに愛が育つ家があるはず。それがHandiHouse projectの「家づくり」です。2018年からは「家を趣味にしよう」を合言葉にオンラインサービス、HandiLaboをスタート。
社員数/13名
年間新築件数/新築2棟 改修30件
基本情報(年間売上、平均単価など)/売上1.5億円
石田 伸一氏
石田伸一建築事務所(新潟市)代表取締役/建築家
時には屋外で仕事をすることも。自然の中でプランを練ることは「五感を生かした良質な設計」につながるという
昨年独立した石田伸一さんは、事務所も自社ウェブサイトも持たない建築家として「ノマド*アーキテクチャー」を名乗り、新潟市を拠点に活動している。デジタルデバイスやアプリを駆使した従来の家づくりの概念を覆す手法や、反響後の成約率9割超を誇るSNSマーケティングを基盤に、どんな場所でも仕事ができる「ノマドな働き方」を実践している。
石田さんが、ふだん業務のために持ち歩くツールは、iPadやiPhone、MacBook Air、Apple Pencil(スタイラスペン)、一眼レフカメラと交換用レンズ、モバイルバッテリーなど。図面・打ち合わせ資料(紙)の分厚いファイルなど、かさばるものは一切持ち歩かない。顧客との打ち合わせや協力業者とのやり取りはLINEを活用、打ち合わせ資料はBox(クラウドサービス)に格納してある電子データを用い、どうしても印刷が必要な場合は、コンビニのネットワークプリントサービスで対応する。
一見すると、顧客からは「事務所がない=信用できない」と捉えられてしまいそうだが、実際には「ノマド的なあり方」は、事務所のかまえ(立派さ)などに関係なく「建築家・石田、人間・石田」を信頼してやってくる「ホットリード(今すぐ客)」と出会うためのフィルターとして機能しているという。
潜在顧客は、石田さんが運営するインスタグラムやブログなどを見て、石田さんの人物像や施工例を知る。その時点で合わない人は離脱、深く共感した人のみがコンタクトを取ってくる。そのフィルターを通ってきた顧客の成約率はなんと約97%(31件中30件契約/第1期)。独立直後に「施工例が見られないから」と失注した1件以外は受注しており、競合もほとんどないという。講演では、そんな次世代型経営・ノマドアーキテクチャーの実態を解説する。
*ノマド…ノートパソコンやタブレット端末などを用い、場所や時間にとらわれずに仕事をする新しいワークスタイルを指す言葉
会社プロフィール
会社紹介/2018年7月設立。「long loved design」「地材地建」を理念に掲げる。地元の魚沼杉を利用した住宅建築設計やリノベーション、コンテナ建築、店舗設計、家具設計などを手掛けながら、他ビルダーの設計、ブランディングサポートなども行っている。
社員数/4人(石田を入れて全部で4名)
年間新築件数/<第1期>
新築完工5棟、リノベ完工3棟、店舗完工3棟
新築設計11棟、リノベ設計5棟、店舗設計3棟
基本情報(年間売上、平均単価など)/平均単価:新築住宅 80万円/坪
年間売上:第1期主に設計料3380万円 第2期予定4500万円
大橋 利紀氏
Livearth リヴアース(岐阜県養老町)代表取締役社長
「心地良さ」×「デザイン」×「性能」を追求する
リヴアース社長の大橋利紀さんは10年ほど前から、「本質的なものづくりをきちんとやる」ことと同時に、「差別化」を意識して会社の方向性を決定してきた。小規模な事業形態を大幅に変えることなく、建てる住宅のレベルをコツコツと磨くことによって会社のブランディングを実践。直近の完成見学会では、二日間で100組以上が来場するなど、確実にファンのコミュニティ化が進んでいる。
大橋さんは、学生(建築学科)時代から海外の建築を学び、実際に視察して、パッシブハウスに強い関心を持つようになった。家業の工務店に入ると「性能もデザイン性も高いレベルで両立した家を提供したい」と思いを新たに、さまざまな勉強会に足を運んだ。学びを生かし、自社が建てていた住宅を徐々にレベルアップ、住宅のコンクールでの受賞が増えるなど、成果は形として表れた。ホームページも一新し、コンテンツを増やしながら家づくりへの想いを発信。「サイトの内容を一通り読んでから来てくれる」という顧客が増えるのに伴い、紹介による受注も増えていった。
パッシブデザインを取り入れた同社が手掛ける住宅は、素材へのこだわりも特徴的だ。地域に馴染むデザインと環境に配慮した素材の選択が訴求ポイントになっている。プランニングでは、採光と通風による感覚的な居心地の良さを提案するだけでなく、それをシミュレーションして数値で示すことにより、専門知識のない顧客に対して「見える化」してわかりやすく伝える。省エネや耐震性についても同様で、「やれることは全部やる」というのが大橋さんの信条だ。
今年は、耐震性や温熱環境など「本質改善型」リフォームの独立ブランドとして新たに「リヴ・リノ」を立ち上げた。来年は、新しいモデルハウスもオープンする。積み上げてきたブランド力を武器に、さらなる飛躍を目指す。
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