公益社団法人日本建築士会連合会(東京都港区)はこのほど、同会が主催する「第47回 日本建築士会連合会賞」の結果を発表した。優秀賞には、安野芳彦氏(東京建築士会)設計の「ゆいの森あらかわ」(東京都荒川区)、花岡郁哉氏(東京建築士会)の「日本海事検定協会本部ビル」(東京都中央区)、根本雅明氏(東京建築士会)の「アマダ記念会館」(神奈川県伊勢原市)、丸山晴之氏(福井県建築士会)の「ヒュッテナナナ」(福井市)、阿曽芙実氏(大阪府建築士会)の「HAT house ‐生きていく 住まい‐」(兵庫県神戸市)の計5点が選ばれた。9月21日に北海道函館市で開催される建築士会全国大会で表彰式を行う。
「ゆいの森あらかわ」は、荒川区の中央図書館、区ゆかりの作家・吉村昭の文学館、子ども施設の3つの機能を複合させた施設。大規模施設のあり方について奇をてらうことなく、かつ斬新であたたかい提案をし、街並み整備に貢献している点などが高く評価された。
「日本海事検定協会本部ビル」は、敷地一杯に建つ間口10m、奥行き23mのオフィスビル。南北面の二面に解放することが可能なオフィス空間を実現すると同時に、北側立面に左右対称の表情を持たせることでいかにも裏側然とした佇まいを避けている点、各階の環境条件に合わせたルーバー配置で都市に対して奥行きのある表情を創り出している点などが高く評価された。
「アマダ記念会館」は、企業の展示館と迎賓館、2つの機能を併せ持った複合施設。瓦・木・石・土・鉄・コンクリートなど質感あふれる素材を繊細に使用し、大胆な中にもきめ細やかな納まりが見え隠れし、質的に見応えのある和風建築に仕上がっているとして選ばれた。
「ヒュッテナナナ」は、10m×60mの南北に細長い敷地の中央に配置された四方ガラスの開放的な木造建築。床は鉄骨梁によって支えられた南北に風を通す高床式の構造で、床より上はシンプルな無垢の木造軸組。日本建築の原型とも言える高床形式と縁側、純粋な素材と構造、外連味のないディテールが清々しく、現代建築の夢の住宅へのオマージュとして高く評価された。
「HAT house ‐生きていく 住まい‐」は、六甲山脈から海に向かって傾斜する住宅地に建つアトリエ併用住宅。平面輪郭に対し45度の角度を振ったプランニングや場所によって異なる素材が多用される壁面、細かく変化する床レベルなど、類例がないくらい多くの要素が活き活きと振る舞う作品として選ばれた。
同会では、特に優れた建築作品の設計者として建築士会会員を表彰するため1986年に日本建築士会連合会賞を制定。今回は全国の25建築士会から109点の応募があった。建築種別は住宅42点、学校や医療施設などの施設47点、事務所・店舗などが20点だった。村松映一氏を委員長とする審査委員会が一次審査(書類)で23点に絞り込み、その後の現地審査を経て優秀(5点)、奨励(10点)、特別(2点)の各賞を決定した。
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