ヒノキヤグループ(東京都千代田区)はこのほど、 住宅解体時にみられる繊維系断熱材の黒変・劣化要因とメカニズムに関する調査を実施した。宮城学院女子大学の本間義規教授に研究を委託して実施したもの。調査の結果、断熱材に付着した黒い物質は「主に埃や大気中の浮遊粒子状物質(SPM)である」と推定され、「構造躯体内に大気空気が侵入していることを示しており、躯体気密性の低さによるものと断定できる」との考えを示した。
また、「グラスウールやロックウール等の繊維系断熱材は、気密性を高める気密テープや気流止め等を含めた正しい施工がされていないと劣化し、断熱材本来の機能を発揮しない住宅になってしまうことが明らかとなった」と指摘した。同研究については、9月3日~6日に金沢工業大学で開催される「2019年度日本建築学会大会」で、本間教授が発表する。
同社は2016年8月~2017年9月の約1年間、住宅を解体する際にあらわになったグラスウールやロックウールの状態調査を計117件の住宅で独自に実施。断熱材自体が施工されていなかった17件を除く100件全ての住宅で、断熱材にカビや湿気などの影響と思われる黒い変色や、45%の住宅で断熱材の垂れ下がりによる断熱欠損が確認されたという。これを受けて今回、繊維系断熱材の劣化要因とメカニズムの調査を新たにおこなった。
壁内調査では、築年数22~44年の断熱住宅6軒を対象に、解体時の断熱材のサンプルを採取。各部屋、各方位、各階から合計60サンプル以上を回収し、ほとんどのものに黒変を確認した。また、柱・間柱・筋違い・胴差・梁等の木部の含水率を測定したところ、木部含水率は木材の平衡含水率からすると比較的高い数値を示す住宅が多かったという。1階の構成木材の含水率が高い傾向にあり、床下空間は特に高く、繊維飽和点30%を超える48.1~58.6%を示す住宅もあったという。
PDA培地法・ATP検査法分析では、44%のサンプルからカビを検出。白色~灰白色でアレルゲンの原因にもなるコウジカビの一種やアオカビの一種だった。含有量については、室内塵中に近い値だった。
蛍光X線解析では、土壌由来粒子(Na、Al、Si、Ca、Fe、Mo、Znなど)やSPMに含まれる物質が多く検出され、構造躯体内に外気が侵入し、土埃や大気汚染物質が付着していることが分かった。中でも黒変状況の差異は亜鉛の含有量によるものであり、文献から判断して「大気中の亜鉛は自動車の排気ガスやタイヤ粉塵、ゴミ焼却飛灰が考えられる」とした。
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