一般社団法人健康・省エネ住宅を推進する国民会議(国民会議、事務局=大阪府四條畷市)が主催する「健康・省エネシンポジウム〜SWH事業研究成果を活かすのは県民会議が鍵に〜」が2月26日都内で開催された。国土交通省のスマートウェルネス住宅等推進事業(SWH事業)の5年間の調査による成果と、それを活かした地域ごとの協力体制について議論するもの。
シンポジウム前半の基調講演では、北里大学医学部名誉教授の相澤好治氏が「住まいと住まい方と健康」と題して、シックハウス症候群の発症状況や住宅内でのカビ・ダニ対策、高齢者を中心とする住宅内事故の防止策などについて説明。続いて、慶應義塾大学理工学部教授の伊香賀俊治氏が、国交省SWH事業の調査で今年1月に公表された第三回中間報告による「得られつつある知見」を解説した。
伊香賀氏は、厚生労働省が2013年に発表した「健康日本21(第2次)」で掲げた、収縮期血圧平均値を10年で4mmHg低下させるという目標について、今回の調査によって、断熱改修後に居住者の起床時の最高血圧が3.5mmHg低下したという結果が出ており、住宅分野としても目標達成に貢献する有意義なエビデンスが得られつつあることを紹介した。
後半のパネルディスカッションでは、国民会議の村上周三会長、北里大学の相澤氏、国土交通省住宅局住宅生産課長の長谷川貴彦氏、奈良県木材協同組合連合会副会長/なら健康・省エネを推進する県民会議の植田薫裕氏、日本生活共同組合連合会品質保証本部総合品質保証担当の鬼武一夫氏、国民会議の上原裕之理事長(コーディネーター)が登壇。奈良県と兵庫県で発足した「健康・省エネ住宅を推進する県民会議」の動向を踏まえ、地域レベルでの建築分野と医学分野の連携の可能性などを議論した。
議論の中で、国交省の長谷川氏は「住まいは地域に密着し、地域のプレーヤーの方々に支えられている。行政の立場として、国にできることには一定の限界がある。地域レベルでの取り組みが出てくることは本当に素晴らしい。健康と住まいについては、建築分野と医療分野の人々の連携が一つの大きなポイントになる。国レベルよりも、顔の見える地域レベルで連携を深めていくことがポイント」との考えを語った。
国民会議の村上会長は、SWH事業の研究成果について「医学と建築の先生方がこれだけ大規模に協力して取り組んだのは世界でも前例のないこと。医学の先生方にも認めていただける具体的な成果が得られている。今後、これらの成果が住宅行政に反映され、日本の住宅が優れたものになれば」と期待を語った。
また、今後の課題として「住まい手のみなさんは、自分の住まい方にはなかなか頑固で直そうとはしない。健康に関わる問題として、その意識を少し変えていけるように、よく伝えなければいけない。そうしたとき、上からの情報提供も大切だが、住民と密着し、地域レベルで盛り上げていくことが大切。そうすれば、調査で得られたエビデンスにも、もっと利用価値が出てくる」との考えを示した。
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