消費者庁の消費者安全調査委員会(消費者事故調)が1月28日に公表した報告書によると、太陽光発電システムによる火災や発火などによるトラブルが、事故情報データバンクに記録が残っている9年間で127件発生していたことがわかった。このうち7件の太陽電池パネル(モジュール)は野地板への延焼による火災事故で、不燃材を使用していないタイプの製品だった。事故調は注意喚起している。
事故調は、太陽光発電システムから発生した火災や発火、発煙、加熱の事故について調べた。消費者庁の事故情報データバンクには2008年3月から2017年11月までの9年間で127件の事故が登録された。このうち、独立行政法人製品評価技術基盤機構で調査した事案以外の72件を対象としている。
調査対象のうち、火災事故が発生したものでモジュールやケーブルが13件あった。事故調によると、発火箇所がモジュールとされた火災事故の5件は、使用年数7年以上の製品で発生していると指摘。発火要因として、配線接続部やバイパス回路による不具合が経年変化によって進行したためとしている。
バイパス回路が断線した状態で配線接続部が断線すると、断線箇所にシステム全体の電圧が加わって過電圧となり、放電が発生すると指摘。配線接続部を覆っている封止材を発火させる危険性があるという。
一方、発火箇所がケーブルとされた火災事故10件のうち6件は、施工不良が発火の原因だと指摘した。ケーブルの挟み込みや不適切な中間接続が発火を誘発させるという。そのほか、コネクタの緩みによる発熱が2件報告された。
設置形態で異なるリスク
事故調は、太陽電池パネルの設置形態によってリスクが異なると言及している。野地板への延焼による火災事故で被害が大きかった火災事故の7件は、いずれも不熱材を使用していない、ルーフィング上に直接設置する「鉄板なし型」タイプだった。
屋根材の上に架台を取り付け設置するタイプの「屋根置き型」や、ルーフィングの表面に鉄板などの不燃材を使っている「鋼板等敷設型」、鋼板の不燃材料を付帯したモジュールを直接設置する「鋼板等付帯型」は、火災事故が発生していない。モジュールの直下に敷設している金属やスレート、瓦により、野地板への延焼を防いだためと思われる。
一方、残りの59件はパワーコンデショナや接続箱から発生した火災事故だ。本体への水分浸入や入力端子の接触不良などが原因だった。
保守点検してない、約7割
報告書によると、国内の太陽光発電システムの累計設置台数は約237万棟で、モジュール設置形態の割合は、「屋根置き型」「鋼板等敷設型」が合わせて約94.8%、「鉄板付帯型」が約0.7%となる。野地板への延焼による火災事故の際に使用されていた「鉄板なし型」は約4.5%で約10万7千棟だ。保守点検については、所有者へのアンケート調査で、約7割が実施していない実態が浮き彫りになった。
事故調は、既に設置されている製品のうち「鉄板なし型」を使用しているものに対象を限定し、リスク算定や設置形態の変更、応急処置などの早急な対応を求めている。
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