一般財団法人建設業振興基金(東京都港区)が運用主体となり、官民で導入を進める建設業界横断の情報システム「建設キャリアアップシステム」の限定運用が1月15日開始された。技能者が保有資格、社会保険加入状況、現場の就業履歴などの情報登録・蓄積を行うことで、処遇改善が図られる環境を整備するためのもの。今年4月から本運用を開始し、初年度で100万人、5年で330万人の技能者の登録を目指す。
同日、国土交通省と同基金による報道機関向け現場見学会が開催され、限定運用現場に指定された大成建設(東京都新宿区)の「麹町五丁目建設プロジェクト」(オフィスビル)と、鹿島建設(東京都港区)の「赤坂5丁目プロジェクト」(ホテル)で、技能者によるデモンストレーションが行われた。
「建設キャリアアップシステム」では、まず事業者と技能者がそれぞれ情報登録を行う。元請事業者は現場開設の際、現場・契約情報を登録し、技能者の就業を記録するカードリーダーを現場に設置する。技能者は本人情報・保有資格・社会保険加入状況などの情報登録によって有効期間10年の専用ICカード(建設キャリアアップカード)を取得し、そのカードを就業する現場のカードリーダーに読み込ませ、システム上で就業履歴を蓄積する。
技能者にとっては、保有資格の登録・更新や就業履歴の蓄積によって、現場や就職先が変わっても過去の経験や技能が評価されることから、キャリアを通じた処遇改善が可能になる。事業者にとっては、現場の技能者の社会保険加入状況の確認、施工体制台帳など書類作成の簡素化といった現場管理の効率化が図れる。
同システムの利用について、大成建設の現場で地中障害撤去工事を担当する岡田組(大阪市港区)の與那城武士職長は、「工事経歴を証明することは、これまで現場で仕事をやってきて初めて認められたこと。初めての元請さんの現場で働くときは一からのスタートだった。自分の職歴を客観的に証明できるようになることは非常にありがたいこと」と喜びを語った。
元請事業者として現場を担当する鹿島建設の上田孝現場所長は、「いよいよ始まったなというのが実感。技能者の資格や現場、社会保険加入状況も分かるということで、現場の安全確保にも非常に大きく寄与することを期待している」「昨今の人手不足、特に若年層の建設業への入職が減少している状況を打開する、非常に有効なものと感じている」と期待を語った。
今回の限定運用では、工種や規模の異なる24の現場で同システムを利用した就業履歴の蓄積を実施する。現場で発生するトラブルに対して利用者をサポートしながら、トラブルの内容を検討・フィードバックし、本運用に備える。24の現場のうち、住宅では新築2現場、リフォーム1現場が指定されている。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。