長谷川建築デザインオフィス(東京都中央区、長谷川順持代表)は、25年前から取り組む温熱環境システム「どまだんシステム」を床下改修に応用することで、湿気で弱った構造材の乾燥を促進し、耐力・耐久性向上に効果があることを確認したことから、このほど改修工法で特許を取得(特許第6422654号)、「どまだん改修システム」として、本格的な販売展開に乗り出す。
同社代表の長谷川さんが発案し、独自に開発した「どまだんシステム」は、新築住宅では、これまでに500棟以上の施工実績がある。学生時代から国宝や重要文化財などの古建築(歴史的な建築物)の研究をしてきた長谷川さんは、「築1000年の古建築でも、1000年もっている部分とそうでない部分があり、そうでない部分を改修しながら時を越えて現代に受け継がれている」と話す。「もたない部分は、湿気により腐朽菌が繁殖して腐れを起こしているのが原因で、同様に既存住宅では結露や浸水による湿気が腐朽菌の繁殖を誘発している」と指摘し、「まず、結露を起こさせないような温熱環境の改善が必要」と訴える。
「居室空間だけではなく風呂や押し入れなどの生活サポート空間や、 床下・壁内など、見えない場所も含めて温度差をなくすことで結露は抑制され腐朽菌の発生源も希少化する」と長谷川さん。断熱材が広く普及すると同時に結露の問題が発生し始めた当時、古建築からの学びを通して、住宅の持続可能性を高める温熱環境システム「どまだんシステム」を考案した。
含水率下げ木材強度を蘇生
同システムをベースとする改修工法として新たに特許を取得した「どまだん改修システム」は、ヒートポンプでつくった温水・冷水を床下のコ ンクリートに埋設したパイプ管に通 し、それによってコンクリートに蓄熱された熱で床下空間を暖めながら、 じんわりと壁・天井内に行きわたらせ、輻射熱で部屋全体を暖める。均等な温度を保つように埋設するパイプ管の配置を設計するのがポイントだ。また、シロアリ対策として、丁寧にホウ酸処理をした砂で床下を整えた上で、断熱材と土間コンを施工する手法も重要となる。低温で床下空間を暖めると同時に、構造材はじっくり低温乾燥される状態となり、それにより含水率が低下し、木材の強度が「蘇生」するという。実際にシステム導入後の住宅で構造材の含水率を測定したところ土台で8~10%を下回った。
衰え始めた住宅を「治療する」
長谷川さんは、「どまだんシステム」を採用した数多くの新築住宅で、土台や柱の根元が施工時よりも乾燥している事実を発見、同システムを改修に応用するアイデアを思いついた。特許は「弱体化した木材の蘇生に結ぶ技術」としてシステムを再構築して申請。「老朽化が進み耐久性も衰え始めた木造建築物の改善手法」として、新規性が認められた。
長谷川さんは「このシステムによる改修により、住宅の快適性だけでなく、潜在的な構造の価値を取り戻す。これからたくさんの既存住宅を治療していきたい」と抱負を語る。今後、既存住宅の改修を実際に手掛ける「認定施工店」を拡張し、プランニングやデザインもコンテンツに加えて提供しながら、全国に展開していく。
システム詳細は同社ホームページにて公開中。
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