実践者の事例からミライを見る。
講師（工務店）紹介企画1

地域の人と技術を守り育て、次世代に継承

　社長の澤口泰俊さんの強い信念のもと、地元の木と伝統の大工技術を生かした家づくりを貫く。ベテランから若手まで多能工化した大工集団を擁し、製材から基礎、左官、板金、建具・家具まで自社でこなす、ものづくりを極めるスタイルは、全国的にも注目を集める。

　岩手県産の南部アカマツをはじめとする地域産材をふんだんに用いて、伝統的な大工の技術で組み上げる豪快で美しい木組みの架構を持つ家が、地域の幅広い層から支持を集める。

　事務所や木材の加工施設などを含む敷地の面積は3000坪。木材を天然乾燥するストックヤードから製材所、鉄筋や左官の材料・道具置き場、建具・家具の製作スペースと、家づくりに必要なあらゆる機能を完備する。

　同社には「本物の木材を扱える本物の大工技術を学びたい」と入社を希望する若者が後を絶たない。そんな若者に対し澤口さんは信頼を置くベテランの棟梁たちとともに、まず「道具のつくり方」や大きな部材を使いまわせる「体づくり」を指導する。

　地域の人と技術を守り、育て、そして次世代に継承する。それこそが澤口さんが自らに課す地域工務店としての使命だ。

広大な加工場には若手が木材を刻むノミの音が響く

楽しみながらかっこよく働く若手が成長の原動力

　顧客のライフスタイルに寄り添う住宅を高いデザイン力と設計力によって形にすることで多くのファンを獲得。創業10年余りで、注文住宅では滋賀県内トップクラスにまで成長した。その大きな原動力になっているのが「楽しみながらかっこよく働きたい」と集まってきた若手社員たちだ。

　ブランドの核は、社長の原田潤一さんが創業時からこだわり、磨きつづけてきた、建築的な裏付けとアプローチをきちんと押さえたデザインと設計。原田さんは「時間の経過で色あせない（価値を失わない）デザイン、暮らすほどに満足度が高まっていく住宅を提供したい」と話す。

　同社は社員のほとんどがデザインや設計、現場監督などを手掛ける技術者集団。営業担当であっても自ら図面を描くことができる。平均年齢は30代前半と若く、設計担当のデザイナーは20代の女性が中心だ。

　自社の手掛ける住宅のブランドイメージがリクルートの決め手となり、採用ではあまり苦労しないという。「モチベーションの高い若い人材のパワーで、さらに大きく成長したい」（原田さん）。

モチベーションの高い若い人材が会社の成長を支える

ローコスト路線から高性能一筋に大転換

　ローコスト分譲ビルダーがしのぎを削る市場で、社長の内藤智明さんは「断熱性能やデザイン性に優れる高性能な注文住宅で勝負する」と明確な経営方針を掲げる。３年前に、それまで手掛けていたローコスト分譲住宅から大きく路線転換。内藤さんは、「無難で売りやすい」つくり手の打算や妥協と決別し、「暮らしの楽しさ」を顧客に提供しながら、「ホンモノのものづくりの喜び」を追求していくことを決めた。目指すのは顧客も社員も満足する家づくりだ。

　路線転換後、2017年には新築50棟余りを受注。今年は本社近くに新しいモデルハウスをオープンし、それも弾みに2020年には年間180棟受注を達成するビジョンを描く。拡大戦略をとる背景には、危機感もある。内藤さんは「消費増税の駆け込みや東京五輪の特需の後の反動減を考えると、今、できることは全てやり尽くして強固な経営基盤を築いておきたい」と力を込める。

　現在は粗利25％を確保。利益は、平均年齢30代前半と若い社員の育成に大胆に投資しながら、大きな成長を狙う。

リガード「国分寺ショールーム」内観