安成工務店[山口県下関市]
住宅事業部長
弘中 一久さん
“注文住宅”にこだわり、山口・福岡の両県で年120棟もの新築を手がける安成工務店(山口県下関市)。良質なデザインはもとより、パッシブソーラーやセルロースファイバー断熱材、省エネシミュレーションなどに早くから取り組んできた同社が次に注目するのが、クラウドによる業務のICT化。ダイテックの「注文・分譲住宅クラウド」を使い始めた住宅事業部長の弘中一久さんに話を聞いた。
工務店はもっと魅力的な仕事、職場がつくれるはず
悩みは膨大すぎる仕事量
自社設計・自社施工による注文住宅に特化する––。これが安成工務店の家づくりの大きな特徴です。顧客満足と地域の評判を高め、選ばれるためには、プロによる“最高の提案”が実現できる注文住宅しかない、と思うからです。
ただし、1棟ごとにまったく違う家づくりは、社員1人ひとりにかかる負担が大きいのも事実。たとえば、デザインの検討にもかなりの労力を割きますし、性能表示や長期優良住宅などの確認申請以外の申請業務にも手間がかかります。
また当社の場合、6つの支店があるため、本社や支店間、部署間の情報共有も楽ではありません。会議や報告のたびに支店・部署・個人とさまざまなくくりで思い思いに資料をつくるため、書類の量も作成手間もかなりのもの。各支店においても、営業・設計・工事・事務の各部署が業務ごとに異なるソフトを使っていることもあったため、同じ情報が何度も入力されるといったムダが日常的に起きています。
膨大な業務量と残業を減らし、1人ひとりの効率を上げたい。それを解決するには、1つのシステムで全体の情報を一元化できるクラウドの力が必要だと思いました。
商談から見積もり、実行予算、工程管理、顧客管理まで、業務全般をクラウド上で一元化。単なる情報共有にとどまらず、人材育成、チーム力アップなど波及効果も大きい
クラウドに求めた条件
第一条件は、ストレスなく使えるクラウドシステムであること。これまで各部署が使い慣れた顧客管理、設計、見積・実行予算、会計などの各種パッケージソフトをやめて、1つに統合するわけですから、逆に仕事量が増えるようなシステムだけは避けたいと思いました。それから、いま当社が保管する3500件のオーナー様情報を含むデータを10年後、50年後、100年後と活かし続けたいので、システム会社の実績や信頼性もかなり重視しました。
これらに加え、社員や工務店仲間の意見も参考にし、開発スピードの速さ、利用者の要望に対する対応力を見込んでダイテックの「注文・分譲住宅クラウド」に決めました。社員には、すべての情報を一元化すれば来年はもっと楽になる、3年後はもっといい仕事ができる、10年後はもっと誇れる仕事ができるというビジョンを話しました。
クラウドがもたらしたもの
クラウドを導入してまずよかったのは、会社の運営の仕組みを見直す機会になったこと。全情報が「見える」ので、「こんなにムダな書類があったのか」「みんなこんなに大変な処理をしていたのか」と気づくことができたからです。
また、いつでも、だれでも情報に触れることができるので、会議や報告のためにその都度体裁を整えた資料づくりをしなくても、クラウドに入力するという「実労」がそのまま「資料」として使えるメリットも大きいですね。
ほかにも、パッケージソフトでは叶わなかったことがだいたい可能になります。出張先でも社内と同じように仕事ができますし、バージョンアップの手間やコストがかかりません。共通のプラットフォームが使えるので、申請書類の書式や元号、消費税率が変わってもタイムリーに対応することができます。
社内環境整備と人材育成も
いま、クラウドに一番希望を見出しているのは若手社員かもしれません。なぜなら、これまでは自分が関わらない仕事については知る手立てがなかった情報に触れられるようになり、知識や技術の向上に役立てることができるから。
いまはもう「背中を見て学べ」は通用しませんし、だからといって1から10まで教えるために人や時間は割けません。それが、必要な情報がすべて入ったクラウドなら「使えばわかる」ようになるはずです。
また、女性社員が4割いる当社にとっては、テレワーク環境を整えるうえでもクラウドは不可欠です。
人が活躍するためのICT化
じつは、クラウド化と同時に社内改革にも着手し、営業・設計・工事の壁を取り払ってみんなで助け合う仕組みに変えました。チームで仕事をするうえでは、各人がいま何をしているのかが見えないと助け合えません。ここでもクラウドは欠かせない存在になっています。
また、当初は業務の効率化だけを目指して導入したクラウドですが、使い始めてみると成長・進化する、無限大の可能性を秘めたシステムだと気づきました。一方で、人にしかできない部分もまだたくさんあります。人がやらなくてもいいタスクはICT化してムダを省き、お客様にもっと満足していただける仕事、楽しくクリエイティブな仕事は人がやったほうがいい。両方をうまく組み合わせることで、工務店はもっと魅力的な仕事、職場がつくれるはずです。人を大事に考えるからこそ、クラウドが必要だと思うのです。
10/17、10/24開催のICT活用術セミナーに安成工務店・弘中一久さんが登壇します。
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