「人生に、野遊びを。」をコーポレートメッセージに掲げ、アウトドア愛好家からの熱狂的な人気を誇るアウトドアブランド・スノーピーク(新潟県三条市)。同社ではコンセプトに共鳴する全国の工務店とタッグを組み、日常生活の中に“野遊び”を取り入れる『URBAN OUTDOOR(アーバンアウトドア)』という新しいライフスタイルを提案している。
自然素材を用いた健康な家づくりを手掛けるプレースホーム(佐賀県神埼市)は昨年9月、同ブランドのショップインショップ※「ナチュールPLUS」をオープン。「アウトドアの要素を取り入れた暮らしを通じて人生を楽しもう!」というワクワク感がスタッフや顧客の間に広がっている。
ショップから『URBAN OUTDOOR』発信
スノーピークでアーバンアウトドアを担当する吉野真紀夫さんは、アーバンアウトドアを「日常的な暮らしと自然をつなぐ架け橋」と表現する。今年で創業60周年を迎える同社だからこそ生産できる良質なアウトドア製品を暮らしのエッセンスとして取り入れることで、自然を身近に感じながら日々を過ごすことができると考える。
そんな新しい暮らし方を実現する同ショップは、プレースホーム本社の敷地内にある家づくりをリアルにシミュレーションできる体験館「PLUS」の隣に新築。25坪ほどの空間にはスノーピークの商品が楽しげに並べられており、訪れる人の想像力やワクワク感を掻き立てる。
ショップに立ち寄る顧客を出迎えるのは、今年3月から専属スタッフとして働き始めたプレースホームの山﨑愛子さんだ。ここで働き始めたのをきっかけに、あっという間にアウトドアの魅力のとりこに。今では、1人で大型テントを建てることができ、お盆休みには家族とキャンプに出かけるなど、すっかり“玄人キャンパー”が板についた。そんな自身の体験も交えながら、接客を通じて“野遊び”が日常に溶け込む暮らしの豊かさを顧客に伝えている。
「暮らし方を伝える」
同社がスノーピークとの連携によるショップの導入を決めたのは昨春のこと。吉野さんとプレースホームの山﨑清二社長が「モノ(箱)を売るのではなく“暮らし方”を伝えたい」という熱い想いで意気投合した。ショップを体験館に隣接させたのは「家づくりの段階からライフスタイルとしてアウトドアを意識してほしい」との思いからだ。
体験館「PLUS」の前に週末になると建てられるテント。山﨑さんはこれを1人で建てられるのだとか!
ショップの運営に当たるスタッフは、常務の福田勝馬さんが「アウトドアを知らなくても、とにかく楽しそうに働く人」という基準で選抜した。現在は計7人のスタッフが働いており、うち山﨑さんを含むスタッフは研修を受講しライセンスを取得した「スノーピークマイスター」だ。
体験館やショップの前には、来客が増える週末になると、スタッフが自主的にテントを張る。アーバンアウトドアの楽しさや暮らし方を訪れる人たちに伝えようと始めた試みだが、山﨑さんは「(自分たちが)楽しいから自然とやってしまうという感じですね」と笑う。
スタッフも純粋なファン
山﨑さんは、ショップで働き始めてから半年足らずで、マイアウトドアグッズを一式そろえてしまうほどのハマりよう。そのきっかけをつくったのが、ショップで一緒に働く専属スタッフの古賀正信さんだ。
スノーピークとプレースホームがコラボしたショップインショップ「ナチュールPLUS」内観
筋金入りのキャンパーで、スノーピークの製品も50アイテム以上は持っているという古賀さんは、昨年9月に同ショップのオープンイベントの折込チラシを見た際、「ついに佐賀にスノーピークの店ができる!」と感動。はやる気持ちを抑えきれず、オープン前の準備中の店に飛び込みでやって来てしまったという。そんな古賀さんのスノーピークへの熱い想いを感じた福田さんが、古賀さんをスタッフとして即スカウト。以来、アウトドアの魅力だけでなく長年の経験や技術的なものも伝えられる頼もしい「伝道者」が誕生した。
外部から入社した古賀さんは「この会社はみんなが自主的で、楽しんで仕事をしている」と感じている。来店した顧客から「この製品を使ってみたい」と頼まれたとき、同社では店員レベルで判断し、その場で試してもらうこともできる。「普通の会社は、高価なキャンプ用品に対して、(店員に)そこまでの裁量を与えにくい。お客さま満足を第一に考え、お客さまに接するスタッフに任せてもらえるのは、(お店にとって)ものすごい強みだ」と古賀さんは語る。
そんな“純粋に楽しむ気持ち”が顧客にも伝わるのか、客足は増加傾向にあり、ショップへの来店者から住宅案件の受注にもつながるといった効果も出始めている。
楽しむ心が共感を呼ぶ
「お客さまはもちろん、スタッフにも日々の暮らしを楽しんでほしい」と願う福田さん。同社では勤続表彰として、5年間務めるごとに無期限の有給休暇5日間がプレゼントされる。この休みで「家族でゆっくりキャンプを楽しんでほしい」(福田さん)とし、希望者には会社からテントも貸し出すという。
スタッフがしつらえたショップ2階バルコニー部の展示。まるでキャンプ場かのような開放的な暮らしが想像できる
吉野さんは「スノーピークも社員が楽しんで働いている。純粋な楽しさは共感を呼ぶ」と自社との共通項を示し、「だからこそプレースホームと一緒にアーバンアウトドアを広めたいと思った」と振り返る。
今後はプレースホームが提供する住宅とスノーピーク商品とのパッケージ化したお家も企画中。ゆくゆくは地域コミュニティーの拠点として地産材を生かしたマルシェなどの開催も視野に入れている。
10月2日には、スノーピークが工務店やデベロッパーなどと連携し全国拡大を進めているアーバンアウトドア事業の解説など、野遊びのある暮らし方の新たな開拓を視野に入れた工務店向けの説明会「“野遊び”のある暮らし方」を開催。今後も志を同じくする工務店と共に、自然を楽しむ“ライフバリュー”をさらに広げていく考えだ。
開催時間は14時から。場所はスノーピーク TOKYO HQ3(東京都渋谷区)。問い合わせは03・6805・7738まで。申し込みはこちらから。
※ショップインショップ…ショッピングセンターなどの店内に専門店が出店する形式。ここではスノーピークとコラボした特約店を指す
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。