家屋の再建 じっくり乾燥してから修理を!
長岡技術科学大学大学院 木村悟隆氏
木村悟隆(きむら・のりたか)
長岡技術科学大学大学院生物機能工学専攻准教授
専門は化学(高分子材料)、いわゆるプラスチックだが、2004 年の新潟県中越地震から、仮設住宅の居住性の調査や、被災者支援にも関わっている。著書に「地震被災建物修復の道しるべ」(共著)など。
浸水被害を受けた個人邸の復旧作業(7月17日岡山県倉敷市・真備町にて)
前・中編に続いて、最終回の後編では公的支援を活用した住まいの修理・再建について解説します。
16.家屋の修理・再建
最近の高気密高断熱住宅の場合ですが、過去の水害で天井までは浸水しない床上浸水で、修理に500万円かかったという話を聞いています。罹災証明の「半壊」住宅の修理には、地震災害の同じ認定の家よりもお金がかかるといっても過言ではありません。
ただし、水災の保険は補償が手厚いです。これから述べるように、水災の保険に加入しているか否かで、修理の道筋も大きく変わってくる可能性があります。
前提として、新しい畳を入れる際には十分注意してください。水分をかなり含んでいるので、入れた後も換気を十分にしてください。過去の災害で入れたばかりの畳がカビた事例がたくさんあります。その全てが換気不足でした。
また、「前編」でも書きましたが、応急処置後、木材や基礎の乾燥には最低でも1カ月、できれば2カ月は乾燥してください。早く直したい、お盆までに間に合わせたい、と思っている方が多いと思いますが、大変ですが修理はしばらく待ってください。
修理・再建の間の仮住まいが必要な方が多いと思います。既に多くの自治体から仮設住宅が提供されると広報されています。今回の災害では、半壊の方も入居できます。民間賃貸の借り上げや公営住宅の無償提供という「みなし仮設住宅」が今のところほとんどですが、自治体によっては既に建設型仮設住宅の計画を公表しています。仮設住宅に入居すると、応急修理制度は使えません。ただし、喘息やアレルギーをお持ちの方は仮に2階が浸水していなくても発災しばらくは、被災エリアに留まると症状が増悪する可能性があるので、仮設住宅への入居をお勧めします。
■みなし仮設住宅
みなし仮設住宅は、東日本大震災以降に積極的に行われるようになった方法で、未だに自治体によって運用が随分違います。行政がリストアップしてその中から選ぶ場合、ある条件内の物件を自分で探して行政が追認する場合など、さまざまなケースがあります。仮住まいの契約をする前に、市町村にみなし仮設住宅として認められるかどうか確認してください。既に自分で借りている場合は、みなし仮設として追認してもらえるかどうかを市町村に相談してください。
■修理の基本的な考え方
前置きが長くなりましたが、水災の保険・共済に加入している場合と、未加入の場合での修理の考え方についてまとめてみます。
1)水災の保険・共済に加入している場合
「再調達価格」特約(新価、実損払など、損保会社によって名称が異なる)を付けていれば、工務店の見積に対して支払われるので、仮に公的支援が無くても持ち出し無く住宅を修理することができます。前にも書きましたが、応急処置の費用も含めて請求できます。全ての損害を漏れなく見積に入れてもらいましょう。もちろん、保険はあくまで「補償」ですので、実際の工事で「応急修理制度」を使うのも問題ありません。保険ではカバーされない、家屋や家財以外の様々な損害があると思います。使える制度は漏れなく上手く使って、生活再建を進めていきましょう。
2)水災の保険・共済に加入していない場合
半壊だとすると、公的支援で支給されるのは応急修理制度の58万4000円しかありません。義援金は通常半壊以上であれば配分されますが、過去の事例から考えても、半壊では額が少ないと思われます。仮に440万円を自己資金とすると、融資は受けられても、返済まで考えると容易ではありません。高齢者の場合は、お一人では融資が受けられない場合も多いかと思います。
全壊でも応急修理制度は使えますが、支援金と合わせて260万円弱。残りは融資も含めて自己資金で賄わないといけません。既に新築の住宅ローンを組んでいて、修理のローンとの二重ローンになり返済が難しい場合には、先述したように被災前の住宅ローンの減免が可能です。
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