15.支援制度を調べる
さまざまな支援制度がありますが、そのほとんどは半壊以上が対象です。住宅の修理につかえるものとしては、災害救助法の応急修理制度(半壊以上)、被災者生活再建支援法の支援金(大規模半壊以上)がありますが、実際にどの支援制度が使えるかは自治体によって異なります。今回の豪雨災害の被災地では、この2法いずれも適用されているところ、どちらか一方のみ適用されているところ、いずれも適用されていないところの4つのパターンがあります。お住まいの市町村の適用状況を確認してください。
自治体よって異なる支援制度の適用状況4つのパターン
■災害救助法による支援
災害救助法の応急修理制度では、今回の災害では58万4000円を修理に充てることができます。被災者が依頼した工事業者が市町村に見積書を提出し、市町村が業者に工事を依頼、工事完了後に業者に市町村から工事費用を支払います。見積書を提出しないで工事した場合は制度の対象外になるので注意してください(過去の災害では例外的に認めたケースもある)。かつては、応急支援制度を活用できるのは一定の所得以下の方々に限られていましたが、熊本地震で所得の制限が事実上無くなったので、半壊以上であればどの世帯も利用できます。
自治体があらかじめ登録した業者(指定業者と呼ばれる)のみ工事を請け負うことができますので、こちらも注意すべきでしょう。ただし、追加登録を受け付けている場合がほとんどなので、指定業者でない業者に依頼する時は、その業者に指定業者の登録を行うように併せて依頼してください。なお、指定業者制の運用も過去の災害ではさまざまでしたので、詳細はお住まいの市町村に確認してください。
応急修理制度は、元々、仮設住宅に入居せず、住家を修理して自宅するために作られた制度です。従って、みなし仮設、建設型仮設いずれに入居した場合でも制度の対象外となるので注意してください。また、その趣旨に従って、発災後1カ月以内に工事が完了することと定められています。今回のような規模の災害では、1カ月以内に業者を手当てすることは難しいのと、被災住宅の乾燥に1カ月はかかることを考えれば、期限の延長が恐らくなされるものと思います。あせらなくて大丈夫ですが、制度を使う場合は工事完了期限を市町村に確認してください。1回延長され、さらに延長を繰り返したことも過去の災害ではありました。
・住宅の応急修理制度/内閣府
http://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/sumai/sumai_6.pdf
(過去の適用事例も紹介されているが、運用の詳細は災害ごとに異なるので要注意)
■被災者生活再建支援制度による支援
被災者生活再建支援法では、住宅の被害程度に応じて、全壊で100万円、大規模半壊で50万円の基礎支援金が支給されます。被災者の申請が必要です。申請期限は災害発生時から13カ月以内となっています。
さらに、住宅の再建方法に応じて、建設・購入200万円、補修100万円、賃借50万円が加算支援金として支給されます。住宅の再建方法が分かる書類、例えば建設・購入なら契約書等が必要です。市町村の案内に従ってください。公営住宅に入居(みなし仮設で公営住宅に入居している期間は含まれない)した場合は、加算支援金は支給されません。
内閣府:被災者生活再建支援制度の概要より
被災者生活再建支援法の支援金と災害救助法の応急修理制度の限度額を足し合せると、半壊:58万4000円、大規模半壊:208万4000円、全壊:258万4000円
が修理に使える公的支援の額となります。
今回の水害では、2階まで浸水している家が多いのが特徴です。修理の費用がかさんだり、臭いなどの問題から解体して建て直す方も出て来るでしょう。解体する場合は、半壊や大規模半壊は「みなし全壊」という扱いになり、全壊と同じ支援金が受け取れます。自力再建ですと「みなし全壊」と「全壊」は300万円です。解体費用が行政負担になる「公費解体」になるかどうかは現段階では不明です。「公費解体」でない場合は、この支援金はほとんど解体費に費やされるでしょう。
もし解体した場合には、「滅失届」を忘れずに出しましょう。提出先は、登記していれば法務局(建物滅失登記)、未登記ならば市町村です。固定資産税は1月1日現在に存在する家屋に対して課税されます。解体したのに滅失届を出し忘れて年を越えると、払わなくてよい税金を払うことになってしまいます。
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