罹災証明を申請、使える支援制度は見落とさない
激甚化する水害への対策を!
長岡技術科学大学大学院 木村悟隆氏
木村悟隆(きむら・のりたか)
長岡技術科学大学大学院生物機能工学専攻准教授
専門は化学(高分子材料)、いわゆるプラスチックだが、2004 年の新潟県中越地震から、仮設住宅の居住性の調査や、被災者支援にも関わっている。著書に「地震被災建物修復の道しるべ」(共著)など。
前編に続いて、罹災証明の申請からはじまり、すまいの修理・再建に役立つ公的支援について触れます。
14.罹災証明の申請と調査
お住まいだった家(住家)が被災したこと、またどの程度被災したのかを行政に認定してもらうために罹災証明の申請をします。
罹災証明書は、さまざまな公的支援の基準になるものです。これがないと保険料や税金の減免、住宅の修理や再建のための支援が受けられません。必ず申請してください。申請には、被害状況がわかる写真があった方がスムーズにいく場合もありますが、無くても大丈夫です。「証拠写真を撮らずに片づけてしまったから申請できない」と思い込んでしまった被災者が過去の災害でいましたが、そんなことはありません。
今回の豪雨災害では、内閣府からの通知に基づき、越流、堤防決壊等により広範囲に浸水した区域については、区域一括で認定を行い、申請すれば即時に罹災証明書を発行している自治体もあります。手続きの仕方は、市町村の配布物やホームページに従ってください。
普通、罹災証明書を申請をすると、市町村の職員が家までやってきて、外観と内部を調査します。被害認定は、水害の場合、全壊、大規模半壊、半壊、半壊に至らない床上浸水(単に床上浸水、と記載される場合もある)、床下浸水と区分されます。全壊、と聞くと家が倒壊した場合だけ、と考えがちですが、経済的損壊割合が50%以上、という意味です。半壊も同様で、傾かないと認定されないわけではありません。水害の場合には、内壁や断熱材の吸水、床下に泥が入る、水回りが吸水や泥で汚損して使えなくなった、といった地震にはない特有の被害が考慮されます。
水流や土砂、流木等によって家の外部が変形していれば外観のみで浸水深が決まります。こうした外力による変形がない場合は、家の中に入って、屋根、柱、床、外壁、内壁、天井、建具、基礎、設備(主に水回り。家電製品や家具の損害は考慮されない)の損害を部位ごとに評価し、それを合計して建物全体の損害割合とします。2階建ての場合は、1階と2階をそれぞれ調べてその合計で評価します。
一連の調査と被害認定の指針は、内閣府が定めています。計算方法はかなり複雑です。内閣府のホームページにある例示が比較的分かり易いので参考までにリンクを示しておきます。
・災害に係る住家の被害認定基準運用指針 参考資料(損傷程度の例示)【平成30年3月改定】/内閣府
http://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/h3003sonsho_2.pdf
http://www.bousai.go.jp/taisaku/dai1jichousa.html
ただし、細かい運用は市町村によって異なる場合がありますのでご注意ください。
また、罹災証明の認定に不服があった場合には、再調査を依頼することができます。これは法律で被災者に認められた権利です。先述の区域一括の認定では、地形の凹凸、基礎の高低等により、被災の実情に合わない場合が出てくると予想されます。そうした場合も再調査を依頼するとよいでしょう。
すまいの復旧の流れ(図表提供:木村氏)
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