10.床上の掃除
タオルで汚れを拭き取って下さい。使い古しでよいので、たくさん用意しておくといいでしょう。
11.水損した石膏ボード壁と吸水した断熱材の除去(※水害の保険に加入していない場合。加入していれば一連の修理の際に業者が行うはずです)
最近の住宅では壁に石膏ボードが使われていますが、一旦濡れると容易には乾きません。壁の内部にはグラスウール断熱材が使われていることが多いですが濡れたら乾きません。石膏ボードは濡れるとカビ易く、内部のグラスウールから水分が供給されてさらにカビていきます。内部のグラスウールが濡れた高さまで石膏ボードは切り取ります。浸水深より少し上まで切り取ります。グラスウールが濡れていない場合は、壁はそのままで大丈夫な場合もあります。コンセントボックスを外して調べる方法もありますが、感電しないよう。ブレーカーは切って下さい。
石膏ボードは、産業廃棄物として処理する必要があります。土中に埋めると微生物が分解する際に毒性の強い硫化水素を発生するので、不法投棄は厳禁です。自分の土地に埋めてもいけません。
非接触で壁内部のグラスウールの濡れを知ることができる水分率計もありますが、数万円します(住宅のメンテにあたる工務店では、1台あればチェックに有用です)。
12.消毒
水害で消毒剤としてよく用いられるのは、消石灰、オスバン(塩化ベンザルコニウムの商品名)、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤の主成分)、クレゾール(病院等で消毒に用いられる)、消毒用エタノール(エタノール76.9~81.4vol%)があります。これらを使う時はマスク、ゴーグル、ゴム手袋を必ず着用して下さい。
消石灰はこれまで水害被災地で屋外や床下に多く撒かれてきましたが、土壌の殺菌効果の科学的証拠はありません。粉末を吸い込むと呼吸器疾患、手に触れたり目に入ると障害を引き起こす恐れがあります。万一使う場合は、汚物の周辺等に限って散布して下さい。屋外は紫外線によって自然に殺菌されると言われています。
オスバンは、石けんの一種で、規定の濃度に薄めて様々な用途に消毒剤として使えます。濃度は規定以上に濃くしても効果は上がりません!有機物があると効果が落ちるので、家屋の木部を消毒する場合は、先に汚れを拭き取って下さい。
次亜塩素酸ナトリウムは、食器の消毒に向いています。所定の濃度に薄めてから使用して下さい。家屋の木部にも使えますが、漂白作用もあるので白くなりがちです。大事な家具や室内の見える柱などに用いる場合は、あらかじめ通常目に見えない場所で変色しないか確認して下さい。吸い込むと、呼吸器疾患の恐れがあるので噴霧はしないで下さい。
消毒剤使用後の乾燥にも注意して下さい。オスバンと次亜塩素酸ナトリウムはいずれも水溶液です。消毒剤の効果は時間が経つと無くなります。その時点で湿っていると新たにカビの原因となります。これら消毒剤で消毒したら直ちに換気を十分に取り乾燥させて下さい。
消毒用エタノールはそのまま使えます。水で薄めると効果が無くなるので注意して下さい。エタノールは可燃性なので、使用時は十分換気して下さい。木部に広く使え、変色はしません。汚れがあると効果が落ちるので、あらかじめ拭き取って下さい。水と一緒に揮発するので木部は乾燥したままで保てます。値段は高いので使える面積が事実上限られるのが欠点です。
13.床下の乾燥(約1カ月)
排水・洗浄や泥出しの終わった後は、十分に乾燥させて下さい。床下に送風して屋外に排気することを勧めます。「ダクトファン」があると、空気を直接床下に送り込めますが1台2万円ぐらいします。無い場合には、扇風機の首を下向きにして換気口から空気を送り込みます。家にいるときは窓を全部開けて換気して室内の湿度を下げるよう努めて下さい。木部とベタ基礎のコンクリートの乾燥に1カ月は掛かります。
乾燥中にカビが生じた場合は、そこだけ再度消毒剤で拭き取って下さい。木材の水分率が15~20%まで下がるのが目安です。水分率計があるとよりよいです。安いものならネット通販などで500~1000円で売っています。
とにもかくにも水害からの復旧は「乾燥第一」。あわてずじっくり乾燥するまで待ちましょう。次回で詳しく触れますが、待っているうちに、保険金額、公的支援制度で利用できる額が分かってくるでしょう。生活は不便ですが、その間2階のある方は2階で、そうでない方やアレルギー・喘息などを持っている方は、仮住まいを考えて下さい。
次回(後半)は、支援制度と修理について紹介します。
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