写真を撮る・領収書やレシートを取っておく
被災された顧客への支援方法
2018年7月豪雨により、西日本を中心に洪水や土砂災害などの被害が相次いだ。自社が被災したり、顧客が被害にあったという工務店も少なくないはずだ。一方、自社が被災したり、あるいは複数の顧客が同時に被害に遭われて、すぐに本格的な修理には取り掛かれないという工務店もいるだろう。こうした工務店は、まず顧客に対してどのようなアドバイスをすればいいだろうか。長岡技術科学大学大学院准教授の木村悟隆氏に、家の片付けや支援金の手続きなど、住民が被災後に取り組むべき項目について寄稿していただいた。
※最終ページから「やるべきことチェックリスト」がダウンロードできます。
長岡技術科学大学大学院 木村悟隆氏
木村悟隆(きむら・のりたか)
長岡技術科学大学大学院生物機能工学専攻准教授
専門は化学(高分子材料)、いわゆるプラスチックだが、2004 年の新潟県中越地震から、仮設住宅の居住性の調査や、被災者支援にも関わっている。著書に「地震被災建物修復の道しるべ」(共著)など。
梅雨豪雨災害で被災した方々にお見舞い申し上げます。この記事がアップされるころにはそろそろ自宅の片付けが始まっていることと思います。被災された方は、焦りと不安の中で、一刻も早く、日常生活を取り戻したいと切望されていることでしょう。すぐに家に戻って片づけをはじめたり、自治体におしかけて支援の手続きを求めたりする方もいらっしゃるかと思います。そうしたお気持ちはよくわかりますが、過去の支援の経験を踏まえて、いくつか注意すべき点を挙げてみます。罹災証明については、その目的や使い方を次回説明しますので、その前にやるべきことを今回は解説します。
この記事は、主に浸水被害を想定して書きましたが、土砂が家屋に大量に流入している場合は、土砂の除去も必要になります。最も重要なことは「あわてない」「写真を撮る」「領収書・レシートを取っておく」「支援制度を調べる」。これが、災害からのすまいの復興の大事なキーポイントです。加えて水害では「乾燥」あるのみです!
0.あわてない
突然の水害で多くの皆様が、気が動転していると思います。家に入ると、避難前とは全く異なる状況にどこから手を付けたらいいか呆然としつつも、直ぐに復旧に取りかからねば、早く元の生活を取り戻せねば、と焦ります。が、一瞬立ち止まって、以下の点を確認してから作業を始めましょう。
1.さわってはいけない ―太陽電池パネルー
太陽光発電のパネルが流されて散乱していることがよくあります。光が当たれば発電するので、触ると感電の恐れがあります。所有者が分かる場合は連絡して撤去してもらって下さい。御自身のものについても自分では触らず、販売業者や施工業者に撤去を依頼して下さい。
【参考】太陽光発電設備が水害によって被害を受けた場合の対処について/一般社団法人 太陽光発電協会
2. マスクと安全靴・安全インソール(中敷)の着用を
泥や砂が乾いてほこりっぽくなります。その中には、流れ着いた有機物やカビといった「有機粉塵」も含まれます。平時にもありますが、水害直後の被災地域の空気中にはその量が一時的に増えます。吸い込むと、アレルギーや喘息をお持ちの方は症状が増悪する可能性があります。また、健常な方でも何となく喉の調子が悪くなったりすることがあります。被災地域で生活する場合は、マスクの常用を勧めます。
被災家屋に入る場合は、部材がカビていることがあるので必ずマスクをして下さい。アレルギーや喘息をお持ちの方は、可能であれば信頼できる親族や知り合いの方に家屋内の片付けをお願いした方がよいでしょう。
釘が飛び出していたりガラスや陶器の破片が散乱していることがあります。踏み抜かないように、できるだけ安全靴を履いて下さい。安全靴の代わりに、普通の靴に安全インソールを敷いても踏み抜き防止になります。
万一踏み抜いた場合は、直ちに病院に行き、消毒と破傷風の予防接種を受けて下さい。
【参考】転んで錆びた釘を刺してしまいました。すぐに抜けたのですが、そのまま消毒しておけばいいでしょうか/千葉県ホームページ
3.あわてて電気を使おうとしない
コンセントボックスは配電盤が水を含んだままだとショートして感電や火災の恐れがあります。専門業者に漏電していないか先ず確認してもらって下さい。ブレーカーが入ったまま避難した場合は、帰宅時に感電しないようゴム手袋をしてからブレーカーを切って下さい。床下浸水でも、床下に床暖房や太陽電池関連の設備がある場合には同様の注意が必要です。
エアコンも電源を入れないで下さい(室外機は洗浄・乾燥で復旧する場合が多いが、土砂や泥が入ったまま通電するとショートして基盤が壊れてしまいます)。
2015年関東・東北豪雨では、東京電力が「一度水に浸かった電化製品やコンセントは漏電による火災や感電のおそれがあるため、弊社が内線設備等の安全性を一軒ずつ確認してから送電を再開しました」とありますが、場所によっては突然の通電があるかもしれないので注意が必要です。
http://www.tepco.co.jp/ep/echo/goiken/1510.html
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