カーサ・プロジェクト(東京都)は26日、今年度のbud brand(バッドブランド)の発表会を行った。
bud brandは、規格住宅などを展開するカーサ・プロジェクトと、建築・空間デザインを設計するFANFARE(ファンファーレ)が運営する事業で、地域のものづくり会社の代表である工務店が地域のクリエイターとコラボすることで、地域の伝統的な産業に新しい風を吹き込む若い才能を発掘しようというもの(budは「蕾」の意味)。さらに、デザイン学校の学生などに対してはデザインのレベルアップも手助けしつつ、一番の目的はbud brandとして毎年開催される一大デザインフェスタ・ミラノサローネに出展することだ。2016年、2017年とすでに2回企画、出展しており、今回の発表会では3回目の出展報告と次回の告知がメインとなった。
出展に際しては毎回異なるテーマを設けており、今回のデザインテーマは「お祝い」だ。今回、企画にスポンサー参加した工務店は高山マテリアル(神奈川県川崎市)、ウイングホーム(静岡県菊川市)、ロジック(熊本市)、新生ホーム(福島県会津若松市)、シンカ(愛知県長浜市)、ウッドワークプランニング(栃木県下野市)、松尾建設(神奈川県茅ケ崎市)。ほかに協賛工務店は約70社。
その一社、シンカ代表の畠孝二郎さんは、地元の三州瓦の中でも鬼瓦の職人とコラボ。
「地元の三州瓦も少しずつ製造が少なくなっている一方、うちもすべての住宅で瓦を使っているわけじゃない。どうにか地元の産業に貢献したい思いがあり、今回このような機会を頂いたのは非常にありがたかった」と地元への思いを語った。
鬼師と呼ばれる職人との協働により生み出された「菱」は、瓦の特性を生かした組み合わせによってグラフィカルな面白みを出せる酒枡。祝い事の際に用いられれば、内側の釉薬の奥深さも相まって真価を発揮しそうだ。鬼師の加藤佳敬さんは、「何度も焼き直して苦労したが、思い描いたものに近づけたと思う。今までの三州瓦にはない新しい挑戦をさせてもらい感謝している」と話した。
もう一社、ロジック代表の吉安孝幸さんは、福岡デザイン学校の学生のほか、地域を超えて木を使ったクリエーションを行う若い才能ともコラボした。
「デザイン住宅を作っていて、以前からミラノサローネには通っていた。いつか何らかの形で関わりたいと思っていて、このプロジェクトは渡りに船といった感じ」と話す。
「(協賛する)メリットがあるかと言われれば、かなりあると言いたい。住宅会社としてのブランディングとか、採用や育成にかなり貢献してるな、と感じてます。うちでは社内で選考して視察に行ける人を決めている。それがモチベーションになるし、『可能性がある会社』というイメージが社員やこれから来る学生に打ち出せる」と話した。今後人材獲得が厳しくなる中で、こうした取り組みはしたたかに使っていくことも必要だという。また当然、会社がデザインに関わる活動をすることは設計の人間にとってもモチベーションになっているという。
ウイングホーム代表の斎藤元志さんは、静岡デザイン専門学校の学生とコラボして新しいプロダクトを生み出した。同社では、もともと同学校出身者が社員として数名働いている。
斉藤さんは、「今回の企画にはその理念への共感もありながら、優秀な学生がきてうちで頑張ってくれていることもあって学校や学生への恩返しも兼ねているつもり」こうした取り組みをブログに公開することで、同社に興味を持つ学生も増加しているという。
ブランディングにも関係することに触れた。「工務店の場合、ある程度のレベルまで来ると普通の方にそれ以上住宅のデザイン性の高さを伝えるのは難しくて。こういった活動を支援していると伝えることによって、それが理解される部分もあるのかなと思う。もちろん、地域貢献は当たり前ですが」と斎藤さん。同学校の学生もミラノサローネに行けるとあって、競争のモチベーションが高いという。
地域のものづくりクリエイターや学生を工務店が応援する。シンプルで道理にあったスキームに見える。シンカの畠さんは、「地域密着である以上、地域に応援してもらわないといけない。我々はそのために何ができるか」という。
また、同社の三州瓦とのかかわりのように、工務店とのコラボレーションによって、新しい技術が備わるきっかけにもなっている。同社では、この活動が地元の新聞に取り上げられたり、SNSなどで発信。「発信し続けることが大事かと思っています。先日も若者に人気のファッション店舗で三州瓦が使われてましたし、そういうめぐりあわせがあるはず。地域密着である以上、そういうやり方で還元しないといけなくて、5、10年くらい後かもしれないですが」(畠さん)。
bud brandの次回のテーマは「旅」。旅を100倍面白くするデザインがテーマだ。学生支援、地域支援、職人支援、クリエイター支援の4つのカテゴリがあり、学生支援・クリエイター支援が9月末、地域支援、職人支援が7月末の締め切り(ミラノサローネに出展する関係上、ある一定のレベルまでデザインを高めないといけないため)。35万円。また、一口3万5000円のスポンサー企業も募集している。
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