6月15日、住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行された。新法は、住宅を使った宿泊サービス「民泊」の健全な普及のために一定の規制を課し、管理する制度である。観光旅客の宿泊ニーズの多様化により「民泊」が急増し、騒音やゴミ出しなど近隣住人とのトラブルも少なくない。そうした現状への対応からものだ。
宿泊サービスを実施するためには、原則として旅館業法による許可が必要となる。ただし、住宅宿泊事業法による届け出をした者は旅館業法の許可の有無にかかわらず住宅宿泊事業を営業できる。
住宅宿泊事業とは、旅館業法で定めた事業者以外の者が、宿泊料を受けて届け出をした住宅で宿泊サービスを提供する事業。住宅宿泊事業の円滑な運用のため、新法では「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」という3つの事業者を法的に位置づけている。「住宅宿泊事業者」は民泊の経営者であり住宅を宿泊者に利用させる。経営者が不在等の場合には、民泊運営を「住宅宿泊管理業者」に委託する。「住宅宿泊仲介業者」は、経営者と宿泊者を仲介して結びつける役割を持つ。それぞれの監督者を「都道府県知事」「国土交通大臣」「観光庁長官」とし、情報共有により管理する。
住宅宿泊事業の概要(イメージ)
「住宅宿泊事業」を行うためには、都道府県知事への届け出が必要。条例による実施制限として、年間提供日数の上限を180日(泊)としている。この範囲内で、自治体が上限日数を定める。家主居住型であれば、住宅宿泊事業者に対し住宅宿泊事業の適正な運用のための措置として「衛生確保」「安全確保」「快適性および利便性の確保」「宿泊名簿の作成・備付け」「騒音防止」「苦情対応」「標識の掲示」などが義務付けられる。家主不在型であれば、住宅宿泊事業者が標識の掲示を除く上記の措置を住宅宿泊管理業者に委託することを義務付けている。
「住宅宿泊管理業」を行なうためには、国土交通大臣への登録が必要。住宅宿泊管理者には、住宅宿泊事業の適正な運用のために、住宅宿泊事業者と同様の措置(標識の掲示を除く)の代行が義務付けられている。
「住宅宿泊仲介業」を行なうためには、観光庁長官への登録が必要。住宅宿泊仲介業者には、宿泊者への契約内容の説明等を義務付けている。
対象となる住宅は、「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」「入居者の募集が行われている家屋」「その他人の居住の用に供されていると認められる家屋」。設備として台所・浴室・便所・洗面設備その他生活の本拠として使用するために必要な設備がなければならない。
6月8日時点で、住宅宿泊業者の届け出件数は2707件、受理済み件数が1134件。住宅宿泊管理業者の申請件数が817件、登録件数が632件。住宅宿泊仲介業者の申請件数が46件、登録件数が10件。実態よりも低調という印象だ。手続きが煩雑で、義務の負担も大きいという声がある一方、「自治体などへの問い合わせはかなり多い」(関係者)ことから、今後、じわじわと増えていくという見方もある。代行業者などによる営業も活発になっており、じわじわと浸透が進みそうだ。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。