一般社団法人健康・省エネ住宅を推進する国民会議(国民会議、大阪府四條畷市)は6月5日、健康・省エネシンポジウムXI「日本とベトナム連携による健康・省エネ住宅基準づくりを目指して」を都内で開催した。日・越の関連省庁及び関連団体の代表者による講演やパネルディスカッションを通じ、両国が協力して「健康・省エネ住宅」調査研究を推し進めていくことを確認することを目的としたもの。
基調講演では、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科主任教授の伊香賀俊治氏と、ベトナム建設省住宅・不動産管理局次長のハー・クアン・フン氏が登壇。伊香賀氏は国土交通省の「スマートウェルネス住宅等推進事業」から得られつつある、断熱改修による疾病・介護予防への寄与に関する知見を解説した。
ハー氏は、ベトナムの2017年のGDPや外国による直接投資が2011年以降で最高となり、建設セクターがその牽引役となったことや、2017年施行の「建設セクターのためのグリーン成長アクションプラン」など、エネルギー効率化に関連する法政令の整備が進んでいる現状を説明。一方、課題として、施策を運用していく能力の不足や、エネルギー効率の高い建築物や健康的な建築物を普及させるためのインセンティブが不足していることを指摘した。
パネルディスカッションでは、日本側の国土交通省、経済産業省、環境省が、省エネ・省CO2化を軸とするZEH等推進などに取り組む一方で、断熱改修等による省エネ化が居住者の健康状況に与える効果の検証を進めていることを説明。また、国際協力機構(JICA)が保健・医療面などでベトナムへの支援を行なっており、今後の住宅における協力によって、さらに同国民の健康増進に寄与できることなどを語った。
近畿大学建築学部学部長・教授の岩前篤氏は、ベトナムや沖縄などの蒸暑地域で見られる通風主体の省エネのあり方によって発生するカビ・ダニ汚染が健康増進の妨げになることを指摘。ハノイの農村部の一般的な住宅と都市部における高級住宅の双方でカビの発生や結露の傾向が見られることから、現地調査を行った上で、ベトナムの住環境に対応した既存改修や新築住宅の普及を進めることを提案した。
一方、これらの日本側の説明を受け、ベトナム建設省副大臣のレー・クアン・フン氏は、ベトナムの国民が住宅について省エネや健康に関心を持つレベルに至っていないことを指摘。まずは国民全員が住宅を確保できること、そして住宅の安全性を備えることが理論的に優先であり、それらの段階を克服して初めて、快適な生活の実現や環境への配慮が可能になると述べ、「ベトナムに適した住宅を作らなければならない。それを前提とした意見交換の場を期待する」との考えを日本側に伝えた。
ディスカッションのコーディネーターを務めた国民会議の上原裕之理事長は「ベトナムはこれから豊かになっていく。そういった人たちに、たとえ今は低所得であっても、日本の技術を集めた夢の持てるような住宅にまず住んで、もっと豊かになってもらいたいと思う」「お金がないから仕方がないではなく、お金がなくても、こういったものに住めるかもしれないというものをゴールにやっていきたい。夢に向かって、日越の官民学の皆さんで知恵を出し合っていきたいと思う」と述べてシンポジウムを締めくくった。
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