COMODO建築工房(栃木県宇都宮市)
2007年設立。地元工務店で経験を積んだのち独立。街並みに溶け込みながら、飯田さん自身のこだわりを残して施主から「すべてお任せします」と言われる家づくりを地域の職人と目指す。新築年間12棟。
僕は、幸いなことに自分の建てたい家づくりをやらせてもらっている。その上で、ようやくお客さんが待ってくれるくらいになった。お客さんをはじめとする周りの人たちに感謝すると同時に、建てたい家づくりができないのなら、家づくりはやめるとまで考えている。
幸運と言えばそれまでかもしれないが、工務店にはまだまだやれること、やるべきことがあり、自分も含めて、それをやり切れていないのではないかと思う。
どんな家づくりがしたいのか、それを突き詰めることは当たり前として、果たしてそれを情報としてきちんと発信できているか。どんな情報を出すか、どんな媒体に出すか、自分たちのお客さんは誰なのかを明確にした上で、ブランディングが成り立つ。ブランディングを突き詰めるには、(顧客を)絞り込む勇気も持たないといけない。
自分のお客さんではないな、と思ったら苦しくても諦める。その覚悟が必要。なので必ず「相見積もりはやめてください」と伝える。僕自身も、お客さんに対して半身で向き合うわけじゃない。全身で向き合う自信があるから、お客さんもそうであってほしい。
住宅建築という一生に一度あるかないかの貴重な機会を、お互いの気持ちを込めて体験するわけだから、互いに打ち込める関係でないと。だからこそ自分のお客さんは、住んでからも丁寧に暮らしてくれていると確信がある。例えば、引き渡して1カ月後にお客さんの家へ遊びに行ったとき、外にタイヤを放っているような周囲の景観に対する意識の低い人は「いない」と断言できる。
僕のお客さんは、家に深い愛着を持っていてくれているように感じる。見学会をやっていることなどもあるけれど、他のお客さんの家もよく知っている。一棟一棟を作品のように見てくれる。これがブランドになる。
地域に対してもやれることがある
(地元の工務店として)地域に対しても、まだまだやれることがあると思っている。
例えば、野菜を中心に豊かな食材がある栃木には、「那須御用邸」があるといった影響もあり、街中に強いこだわりを持った料理人が営むイタリアンレストランが点在し、そのお店が、10年以上経営を続けられているのを見ると、(地方も)まだまだ捨てたもんじゃないと思う。同世代のシェフが店舗を出す際、店舗の建築を手掛けるとともに、トータルのデザインも手伝った。県内のクラフト作家と結び付けるなどして、ロゴのデザインまで関わることができた。
こういう仕事が工務店にできるということを、僕らはもっと伝えていかないといけないし、地域の人に僕や会社を利用してもらうようアプローチしていきたい。
工務店なのか、設計事務所なのか。お客さんからも、「家を建ててくれるけど、工務店という感じでもないし、コモドはコモドだよね」と言われる。自分自身でも、そのあたりはまだ曖昧。
僕のやり方がどこの地域でも通用するわけじゃないし、やっぱり運が良いだけなんだろうと常日ごろ感じている。ただ、やりたいことをやっているだけなのに、いつの間にか支持されることもある。僕みたいなやつが、家づくりという人々の暮らしに対して大きな影響を及ぼす大切な仕事を、楽しみながらこだわってやっているということが、けっこう悪くないと思う。
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