パッシオパッシブ(香川県丸亀市)
高性能パッシブハウスを年間24棟を上限に展開。2年待ちの顧客が続く行列工務店。1棟当たりの平均単価は3300万円。丸亀市内で、ドイツ基準のパッシブハウスによる分譲計画を進行中。自社が手掛けた「丸亀パッシブハウス」が、エコハウス・アワード2018でパッシブハウス部門優秀賞、ウェブ人気賞をダブル受賞。
住宅は、社会的インフラ。われわれ現在のつくり手(地域工務店)は、30年後の未来のことを考えて住まいを提供する必要がある。例えば、30年後にUA値0.46W/㎡Kの外皮性能が標準的なレベルになっていて、電気代も今よりも上がっていると仮定したら、その中でも資産としての価値を保つことができる住宅の性能というものはどんなレベルなのか。そのことを考えながら、いまの住宅をつくる必要がある。
現在、特に地方において、既存の住宅が資産価値を保持できていないことが大きな問題になっている。郊外の戸建て住宅で子育てを終えたシニア層が、車を使わなくても利便性が高い街中に移り住みたくても、その元手(資金)がない。不動産としての価値が評価されない住宅を売却することができないからだ。
多くの地域が同じ状況にあると思うが、いまの郊外の戸建て住宅(の街)は、車を運転できなくなった瞬間に「陸の孤島」化する。この問題は、これから少子高齢化が加速するに従い、さらに深刻化する。30年後も資産価値を持ち、住み替えの資金を生み出す住宅を建てるという信念を持っている。若い世代からすれば、自然環境の豊かな郊外で子育てをしたいと望んだとき、性能の高い住宅を中古で安価に手に入れられることになる。住宅という社会的なインフラを賢く活用しながら、ライフステージに合わせた住み替えをスムーズにする好循環につながるはずだ。
われわれ地域工務店の本質的な仕事は、単なる住宅をつくることではなく、そこに暮らす家族の幸せをつくること。それを真剣に突き詰めると、将来にわたって資産価値を持続できる住宅や、そこから展開される地域の人たちが豊かで幸せに暮らせる街のあり方を考えることが仕事の領域に含まれてくるのは必然的な流れと言えるのではないか。
志を共有する工務店仲間と
新たなスタイルにチャレンジ
工務店1社の力は小さい。住宅についてだけでなく、そういった豊かな地域を形づくっていくことに対して共感してくれる工務店の仲間たちとともに活動していきたい。8年前、地域の工務店仲間で事業協同組合として「耐震・省エネルギー・エコロジー住宅を創る工務店ネットワークかがわ(TSE)」を立ち上げ、現在、10社の地域工務店が加盟して活動している。加盟企業の営業を代行するエージェント会社も新設した。このエージェント会社は、単なる営業代行が目的ではなく、高性能住宅の意義やその価値を地域の人たちに対して啓発していく役割も担う。
もちろん、すぐにうまくいくわけはなく試行錯誤を繰り返している。でも、夢物語かもしれないが、例えば加盟工務店が30社になり、年間で300棟という数字をこなせるようになれば、あるべき住宅や街、そして暮らしの価値を形として示せる影響力を持てると考えている。各工務店が、価値の高い住宅を供給しながら、まちづくりの核も担っていくような、そんな未来を思い描いている。
地域の工務店は、会社の規模の大小や家づくりのスタイルなど、さまざまにある全体(複数)の存在によって、地域の人たちの多様な暮らし方や住宅に対するニーズに応えていると思っている。地域の人たちのためにも、われわれは生き残っていかなければならない。工務店がなくなってしまったら、住まいや暮らしの多様性が担保されなくなってしまう。
これからも、自社の企業理念として掲げている「新しい価値を創造することによって地域社会に貢献する」ことを目指して、活動していきたい。
工務店経営カンファレンス2018
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