電力小売事業や再生可能エネルギー発電事業などを手がけるエコスタイル(東京都千代田区)は、小売電力事業者への事業支援を行う調達リスクゼロの新電力プラットフォーム「新電力事業トータルサポートサービス」を展開している。小売電力事業者の事業立ち上げに係る初期費用を同社が負担し、卸電力調達に係る「インバランス」と「市場変動」による経費増加のリスクを肩代わりすることで、新電力事業への参入と経営安定化に向けた支援を行うものだ。
具体的には、新電力事業者の事業立ち上げに関するコンサルティングから、申請手続き、システム設定などを無料で引き受ける。そして、同社が代表となる「バランシンググループ」の独自プラットフォームを通じ、新電力事業で最もノウハウが必要な電力需給調整業務を代行して提供する。これにより、ノウハウを持たない異業種の事業者でも、自社の顧客ネットワークを活用しながら電力小売事業に参入することができる。
調達に係る“リスクゼロ”は、同社が電力需給調整業務を代行することで担保する。通常、新電力事業者には、自社の顧客の需要量と供給量を一致させる「30分同時同量」の義務が課せられ、義務を果たせないときには計画と実績の差分に対する「インバランス料金」を負担するリスクが発生する。しかし、同社のバランシンググループでは、需給調整などのバックオフィス業務を同社が代行するほか、グループ事業者は必要な卸電力を同社から調達し、1年契約の固定価格のもと、1カ月の実績ベースで費用精算するため、インバランス料金の直接的な負担は発生しない。
また、グループ事業者が必要とする電力を、代表契約者である同社が一括して日本卸電力取引所(JEPX)から調達するため、グループ事業者は調達に係る市場変動のリスクを直接に負うことがない。
同社では、こうした顧客メリットを実現するための仕組みとして、気象予報士の知見を生かし、予測率95%という独自の電力需給管理システムや、365日稼働の需給調整業務といった体制を整えている。また、そうしたメリットの対価として、卸電力に対する固定価格を市場価格よりはやや割高に設定することで費用を回収している。
そのほか、同サービスでは、顧客管理代行のオペレーション業務や、クラウドファンディングを通じた再エネ電源開発資金調達の支援も行なっている。
同社は5月22日から東京、名古屋、大阪の3都市で「新電力事業スタートアップセミナー」を開催する。参加費無料、事前登録制。詳細はこちら。
「省エネだけの自己完結でなく」
電力小売全面自由化から2年が経過し、差別化・収益化の困難さが指摘されている新電力事業だが、同社が小売電力事業者への支援を手がける背景には、バランシンググループ拡大による収益性向上という点もあるものの、それ以上に、既存の送配電網のみに依存する電力流通の在り方そのものを変革したいという思いがある。
まだ実を結ぶものは少ないが、それを具体化するための動きとして、自治体による再生可能エネルギー事業へのクラウドファンディング支援や、災害時対応を念頭に置いた地域の小規模水力発電事業といった取り組みを行っている。
同社の中島健吾取締役は、既存の送配電網と共存するかたちで実現するであろう電力のオフグリッド化によって、電気を『売る側』(発電・小売)と『買う側』(需要家)という構図がいずれは崩れ、蓄電池も必要としない、個人間での自由な電力取引が可能になる時が来るだろうと語る。それに向けて「地域での新たな仕組みをどんどん作っていくことが大事。地域の活動が全体の活動につながっていく」と語る。また、「地域に根ざしたある程度の規模の工務店と組むことで、そうした仕組みを一緒に作っていくことができるのでは」と期待を示す。
住宅に関しては、ZEH(ゼロ・エネルギー住宅)など省エネ分野の取り組みが普及する中で、余剰電力を管理していく市場の必要性を指摘する。「省エネだけの自己完結でなく、電気の流通全体を踏まえた議論をしていかなければ意味がない」と現状からのさらなる変革の必要性を訴える。
「今回のプラットフォームはその基盤になるもの。ツールとして使って、発電や省エネを合わせてやっていくことで、本当の価値が出てくる」とアピールする。
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