新建新聞社/新建ハウジングは6月12日、高い志を持ち、各地域で、こだわりの家づくりや次代を担う人づくり、そして、未来へとつながるまちづくりに奮闘する工務店経営者6氏を招き、「工務店経営カンファレンス2018」を開催する。開催を前に、登壇者のインタビューを連載する。
木の家専門店 谷口工務店(滋賀県竜王町)
1994年会社設立。「みんなが喜ぶ家づくり」の経営理念を掲げ、滋賀県を中心とする関西エリアで、住む人が快適に心地よく暮らせる木の家を展開。売上高14.5億円。新築7割、リフォーム3割。2016年に大津市に支店として「大津百町スタジオ」、2017年に東京・表参道にショールームを開設。北欧家具店「+ROGOBA」や庭専門店「A GARDEN CRUE」も運営。
支店を置く滋賀県大津市の活性化を目指し、市内にある、空き家となっていた町家7棟を再生して自らホテルとして運営する「大津百町商店街町家ホテルプロジェクト」を進めてきた。いよいよ6月に「HOTEL 講(こう)大津百町」としてグランドオープンする。
大工一筋で生きてきて、現在、社員79人のうち、35人を大工が占める工務店の代表として、大津をこれまで木の家づくりで培ってきたノウハウと大工の技術により「現代の宿場町」としてよみがえらせたいという強い想いがある。
プロジェクトの舞台である大津市中心部は江戸時代、宿場町として栄え、「大津百町」と呼ばれていた。現在の大津市の人口は34万2400人(2018年4月現在)。京都のすぐ近くという立地条件の良さもあり、10年間で3%ほど増加している。ただ一方で、市内にある町家は全体約1500棟のうち200棟が空き家となっていて、JR大津駅前の繁華街でも、全国の地方都市と同様にいわゆる「シャッター商店街」が広がり、かつての賑わいは失われている。
そこで、このプロジェクトでは、地方創生と商店街の活性化、空き家対策、さらに大工技能の向上と「一石四鳥」を狙う。
誇りを持ち地域のために仕事する
かつての棟梁は、地域に活気を生む立役者だった。地域の人たちのために自分の技をふるい、人々から尊敬される存在だった。が、現在の現場では分業が進み、大工の技を生かす場面は減り続けている。そんな中で、大工がその技量を思う存分発揮しながら、なおかつそれが地域への貢献に地続きでつながっている実感を得られたら、それは大工が誇りを持って仕事をしていくきっかけになると確信している。
特に再生した町家の中には、築100年を超えるものもあり、並大抵の知識や技術では手に負えない。高度な知識と技術を兼ね備える当社の大工だったからこそできた仕事だと自負している。
ホテルとして再生した町家は、商店街や旧東海道に点在しているため、大津駅の近くの空き家を再生して開設した自社ショールーム「大津百町スタジオ」内にフロントを設け、7棟(うち5棟は1棟貸し)・13室を運営する。地元の大津市では、JR大津駅や京阪びわ湖浜大津駅一帯の観光客誘致を強化する「宿場町構想」の具体的な施策の検討を進めており、当社のプロジェクトにとっても追い風になる。
来年は、ホテルの1棟の近くにある空き家を再生して活動拠点にする「大津百町クラフトマンカレッジプロジェクト」もスタートする。大工や家具職人、陶器職人などがそれぞれの技能を生かして「ものづくり体験」の場を提供しながら、作家や職人の商品販売なども行う。職人を育てる文化を広げていく流れを生み出したい。
工務店経営カンファレンス2018
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