新建新聞社/新建ハウジングは6月12日、高い志を持ち、各地域で、こだわりの家づくりや次代を担う人づくり、そして、未来へとつながるまちづくりに奮闘する工務店経営者6氏を招き、「工務店経営カンファレンス2018」を開催する。開催を前に、登壇者のインタビューを掲載する。
石牧建築(静岡県浜松市)
1975年創業。社員数7人。うち4人は20代2人を含む社員大工。デザイン・性能・経営・人材育成を全てやり切り、大工工務店だからこその垂直型多能工化を推進する。2017年に「いそらの家」で日本エコハウス大賞ビルダーズ賞を受賞。
「大工として一生涯を終えられる仕組みづくり」に取り組んでいる。大工の雇用を守りつつ技術を後世につなぐため、自社工場「il bosco(イルボスコ)」を構えた。墨付けや刻みができる場を設け、年配の大工が若い大工にあらゆる技を継承できる環境を整えた。建具や造作部材を加工できる施設も併設し、現場作業が難しくなった年配のベテラン大工も、ここで大工として安心して働き続けることができる。
この業界は、社会保険や厚生年金など、中小企業でも他業種なら当たり前にできていることができていないことがまだまだ多い。将来設計を描ける環境を持続させなければ、若者が増えるわけがない。まずは一企業として、「大工工務店」を若者が働きたいと集まってくる“憧れのフィールド”まで引き上げなければ。
毎日楽しそうに仕事をする大工の父を見て育ち、自然と「大工の技を生かして家をつくりたい」と夢を描き建築の世界に飛び込んだ。が、実際の現場はプレカットが主流。大工は組み立てるだけで、そこに伝統技術は生きていなかった。技術はあるのに体力的に大工仕事を続けることが困難となり、交通誘導員などに転職した人も見た。「このままじゃ若者が来たがるわけがない」と気付き、現場で「たたき」ながら、次世代を担ってくれる若者も育てていこうと、工務店としての歩みをスタートした。
工務店の可能性は無限大
いま構想を練っているのは、大きく2つ。まずは、手間請け出身の大工が各家を回って行うメンテナンス事業を成立させること。定期点検を有料で行うシステム。社内の一事業として行うことも考えたが、流通店で雇用してもらうことで地域ぐるみでやれないか模索しているところ。2、3年内をめどに始めたい。
2つめは、工務店の仕事の幅を広げること。たとえば、自社の加工場で天竜材を使用した造作部材や商品を生産し、地域に広く流通させるメーカーのような役割を担うとか。設計については、「しましま設計室」として対外的に打ち出し、自社以外の仕事も手がけて始めている。
新入社員は入った会社が全ての世界だと思いがち。若手の夢や可能性を広げていくためにも、既存の大工工務店の枠を飛び越えていきたい。
工務店経営カンファレンス2018
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