高齢者を狙った悪質な「訪問販売型リフォーム」が相次いでいる。神奈川県と東京都はこのほど、複数の高齢者に対して「すぐに修理しないと屋根が飛んでしまう」などと事実と異なる説明を行い、不当な契約を強いたとして、住宅リフォーム業者のアリエッタハウジング(相模原市、原田昌幸社長)に対し、6カ月業務停止命令を下した。
同社の従業員が2015年11月~2017年1月にかけて、高齢者の自宅に訪問し「お宅の屋根が古くて傷んでおり、すぐに修理しないと飛んでしまう」「防水シートがめくれていて、露になって風が吹いたらはがれて雨漏りがする」「河原に掘ったような穴が開いている」などと事実と異なる節明をし、違法な手口で契約を結んだという。
神奈川県には昨年7月時点で苦情相談が58件寄せられ、そのうち契約に至ったのは49件。平均被害金額は約90万円にのぼる。被害者の平均年齢は75歳で最高年齢は93歳。契約の内容を適正に判断できない「高齢者」がターゲットにされた格好だ。
神奈川県くらし安全防災局の担当者は、今回の行政処分について「調査手法に関わる事案のため回答を差し控える」と述べた上で、「リフォームに限らず、多数の高齢者が訪問販売で被害にあっている」と語り、クーリングオフ(違約金のない契約の解除)ができる8日間を過ぎてしまっているケースが多いことを明かした。
神奈川県はアリエッタハウジングに対し、業務停止命令の履行を監視するとともに勧告内容に関する業務改善処置について報告させた。今年の1月20日で処分が解けたものの、「当該事業者を含め、違反行為がないか引き続き注視していく」(神奈川県)としている。
“オレオレ詐欺と同じだ” 国交省や総務省は厳しい処分を
安心・信頼できるリフォーム業界の発展のために活動する団体「全国リフォーム合同会議」の代表理事を務める二宮生憲(横浜市、さくら住宅・社長)さんは、今回の事案について「これは立派な詐欺。オレオレ詐欺と同じだ。被害件数は氷山の一角だろう」と憤る。
現状、住宅リフォーム工事に従事するには資格や許可、届け出は必要ない。工事請負負担代金は1500万円未満、建築一式以外の工事の場合は、工事請負代金が500万円未満の「軽微な建設工事」の場合は不要となっている。
二宮さんはこの制度を問題視したうえで、「根本的な枠組みを変えないと悪質リフォームを根絶することはできない。たとえ行政処分を下したとしても、屋号(会社名)を変えて営業を再開させるところもある」と言及し、国土交通省や総務省、都道府県庁がより一層厳しい処分を下すべきとの認識を示した。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。