若手ジュエリークリエイターのためのコミュニティ「ジュエリー・アーティスト・ジャパン」(JAJ、主宰者=シンコーストゥディオ・米井亜紀子氏)が主催するトークセッション「日本のこれからのモノづくり 建築×ジュエリー×金属工芸」が4月11日、都内で開催され、建築家の伊東豊雄氏と、象嵌技法「鹿島布目」五代目継承者である鹿島和生氏が登壇した。
伊東氏は、2015年に竣工した岐阜市の図書館「みんなの森 ぎふメディアコスモス」や、近年の大三島での取り組みなどを紹介した上で、日本の建設業界の現状に言及。職人不足で質の低下が懸念される一方、世界的に高い評価を受けてきている日本の建築は、現場を支える日本人の職人の質によって「救われている」との考えを語った。
「たとえば、曲面をコンクリートで作ろうとすると、ものすごく難しい型枠をつくらなければならない。そういうときに、『自分でなければできない』という誇りを持っている大工さんが日本にはまだたくさんいる。そういう人に救われて、我々の建築はできている。アメリカなどに行って同じものを作ろうとしたら、何倍もの建設費を出さなければならず、それでもうまくできない。まだまだ、日本はいい。」
一方、日本のモノづくりのこれからについて「『洗練(ソフィスティケーション)』することは昔から日本の得意技だが、それだけを自慢にしていくと、生き生きとしたプリミティブなエネルギーが失われていく」「動物的な感受性が失われている都市の生活と、ソフィスティケーションしかない技術が重なり合って、今の日本を詰まらなくしている」と危機感を示し、「新しいことにチャレンジしていく精神が、伝統を守ることにも繋がると思う」と、会場で耳を傾ける若者の担い手たちにアドバイスを送った。
鹿島氏は、伝統工芸の現在について「特に金工の場合、素材そのものの費用が高い。しかし、各素材の性質が異なる以上、若い人がやっていく中で『本番は銀でやるが、練習は錫でやる』というわけにはいかない。練習も高い素材でやり、作り捨てていかなければならない。今の経済だと、そこまで耐え切れず、志があってもフェードアウトしていかなければならない若者もいる」と担い手にとって厳しい状況であることを指摘。
そんな中でも、「金工は、明治の廃刀令によって、それまで刀装具を作っていた技術を帯留めに転用するなど、その時代の金属で自分たちが持つ技術を活かして作ったプレゼンの歴史」とし、「昔からある技術を今のアイテムに置き換えて活かす」ことがモノづくりの担い手にとっての活路となることを示唆した。
JAJの米井氏は、ジュエリー分野のアーティストの課題として「最終的に(作り手が)ジュエリーを身に着ける人とどうやって繋がっていけるか。繋がりながらモノを作ることによって、自分たちが作っているものが、経済優先で作られたものではないということが伝わるのではないか。あるいは、ジュエリーを身に着ける人と交流することによって、新しい何かが生まれてくるのではないか」と考えを語った。
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