【一般生活者のみなさまへ】
健康で豊かなセカンドライフを目指す方におすすめです
子育てや仕事が一段落した後、どこで、どのように生きるか。「人生100年時代」といわれる長いセカンドステージを幸せに生きるための「幸福戦略」が不可欠になっています。
本書では、幸福戦略として、自宅をリノベーションして熱環境を改善することで、健康で豊かなセカンドライフを実現する提案をしています。
本書でいう熱環境の改善とは、断熱性能を高めたり、日差しを遮る工夫をしたり、庭やグリーンを有効活用することで、温湿度や体感の快適さを最適に保ち、ヒートショックなどの健康リスクを最小に抑えること。省エネ・省光熱費にもつながります。家が心地よくなるため、自宅で過ごすことが楽しくなり、夫婦の関係もよくなります。また、自宅を職場やお店にリノベーションする場合でも、健康・快適・省光熱費になります。
本書ではリノベーションによって幸福な人生を手に入れた家族の事例を豊富に掲載、「なぜこんなリノベーションをしたのか」「した結果どうなったのか」を丁寧に解説しています。これを読めば、「住まいを変えれば人生が変わる」ことを理解いただけるはずです。
リフォーム・リノベーションを検討中の方はもちろん、セカンドステージをどう過ごすかを考え始めたすべての方にお勧めしたい、人生と住まいの指南書です。
【住宅のプロのみなさまへ】
断熱化に取り組む住宅関係者におすすめです
改修の80%は50代以上が占めていますが、その大半は修繕や設備の取り換えで、リノベーション(価値を高める改修)は2割ほどに過ぎません。
リノベーションが伸びないのには、シニアの経済状況・予算的な要因だけでなく、セカンドライフを豊かにするリノベーション提案がまだまだ足りない・洗練されていないこともあるでしょう。
本書は、生活者向けに熱環境リフォーム・断熱リノベーションを提案する書籍ですが、プロとしてもシニア層へのリノベーション提案のネタ帳として、社員教育資料としてご活用頂けます。
断熱化に取り組む住宅会社、工務店、リフォーム会社、設計事務所の方、また断熱関連資材を製造・販売する方には特におすすめです。
また、熱環境と健康について、豊富なデータ・知見を掲載しており、健康を切り口とした住宅提案をしたいプロの方には参考となるはずです。
本書をリノベーションの参考書として見込み客に配布・販売して熱環境への興味関心を高めるのにも有効ですし、本書をテキストとした生活者向け勉強会を開催する、そんな使い方にも最適です。
《コンテンツ》
はじめに 住まいを見直すと人生が変わる
1章 医学博士が「欠陥住宅」に住んで実感した「健康な住まい」の基本
2章 「熱環境リフォーム」で冬の快適さはここまで改善できる
3章 住まいの「快適性」と「健康」との深い関係
4章 夏の「暑さの犯人」と「涼しさづくり」の秘訣
5章 6つの実例に学ぶ「人生を変えるリノベーション」
1 五感がよろこぶ家
2 マンションリノベーションの秘訣
3 ぬくもりのある家
4 人が集まる家
5 元気にする家
6 まちとつながる家
6章 戦略なしではリタイア後に孤立する
7章 セカンドステージからの幸福戦略
8章 幸福戦略を実行すれば健康長寿を実現できる
■発行日:2018年4月27日
■タイトル:人生を変える住まいと健康のリノベーション
■著者: 甲斐徹郎/星旦二
■発行元: 新建新聞社
■kindle版 価格: 1,520円(税込)
■ページ数:200頁
●著者 甲斐氏の「はじめに」を全文公開
(P3~P9より)
住まいを見直すと人生が変わる
甲斐徹郎
私は10年前から立教セカンドステージ大学という50歳以上のシニアを対象とした生涯学習の場で、「セカンドステージの住まいづくり」と題した講座を担当しています。この大学で出会う人たちは、「シニア時代は人生のゴールデンタイムだ」と血気盛んで、驚くほど活発にキャンパス内外での様々な活動に参加しています。こうしたセカンドステージ世代のみなさんと接していると、第二の人生を謳歌するため、「仲間との出会い」や「社会への参画」を求めている方が多いことを実感します。その姿は、決して「リタイア」とか「引退」といったネガティブなスタンスではなく、人生はどこまでもクリエイティブに続いていく期待感に溢れています。
レクリエーション(recreation)ととても似ている言葉でリ・クリエーション(re-creation)という別の言葉があります。前者の訳は「娯楽」です。それはこれまでの典型的な余暇の過ごし方で、映画を見たり旅行に行ったりするような消費的な活動を意味します。一方、後者の訳は「再創造」ということになります。それは、新しいステージに向けて自分を再創造するための投資としての活動を意味します。
長寿時代の新しい生き方を説いた世界的ベストセラー、『LIFE SHIFT(ライフ シフト)―100年時代の人生戦略』では、「人生が短かったころは、余暇はもっぱらリラックスのために用いるのが理にかなっていたが、人生が長くなれば、余暇は新しいステージに向けて自分を再創造するための投資の時間になる」と指摘しています。立教のセカンドステージ世代は、まさにそうした「自分の再創造」に邁進しているのだと思います。
そうしたみなさんに対して、私は「セカンドステージの住まいづくり」の講座を担当しているわけですが、その受講生に今住んでいる「暮らしの場をいかに見直すべきか?」と問うと、案外身近な暮らしの場に対する意識は薄く、とくに現状を変える積極的な姿勢は見えてきません。セカンドステージを充実させるためには、自分がいかに「外に出て」、「外と出会い」、「外と関わるか」というように「自分」と「外」との関係の再構築が大きなテーマとなっている一方で、自分にとっての「内」側である暮らしの場を見直すことにはそれほど重点を置いていないことがわかります。
たとえば、講座を受講した60代の独り暮らしのご婦人は授業の最初にこんなことを話していました。「自分にとってのコミュニティと住む場所とは別物です。住まいは他人に左右されない場であることが一番だと思っています」と。この言葉は多くの受講生の気持ちを代弁していると思います。そして別の卒業生は、体が動く間のシニア時代こそが「人生のゴールデンタイム」だと言っています。ゴールデンタイムを有効に活かすためには「外」に出ることが重要、「内」なんかにこもっていられない、というのが大方の共通した意識なのだろうと思います。
そうした意識を持ったセカンドステージ世代に向けて、私の講義は、「元気な今のうちに暮らしの場を整えておかないと人生を楽しめなくなる」という警鐘を鳴らすことが大きなテーマとなっています。そして、その内容をまとめたのがこの本です。
元気なうちは「ゴールデンタイム」を楽しめますが、そのあとはどうしますか?長寿命化により人生100年が現実的となっている時代のセカンドステージは、その先の身体が衰えてくる、言うなれば「サードステージ」の準備期間でもあるという考え方が重要なのです。
人生のセカンドステージからサードステージへ向かう移行期に、自分を「再創造」する舞台となるのは、住まいや地域といった「暮らしの場」です。そうした自分の暮らしの基盤となる「場」への関わりが弱くなっているのが現代のセカンドステージ世代の特徴ですが、その「場」との関係を失うと私たちの活動はどうしても「今を大切に」という、どちらかというと短期的な満足の追求に偏ってしまいがちになります。
「暮らしの場」がかつてはもっていたはずの豊かさについて思いをめぐらすとき、私に重要なヒントを与えてくれるのが、元立教大学大学院教授でもある哲学者の内山節さんです。内山さんは、著書『「里」という思想』(新潮社)の中で、「手ごたえのある幸福感」の拠り所は「ローカルな世界」であると主張します。そして、現代人が置かれている状況を「現在と過去との間にある時間という構造が消えている」と指摘しています。その考えを私の解釈を加えて説明するとこういうことです。自分が「場」に関わることは、その同じ場所で生きた過去の人たちの営みを感じることでもある。その上に自分の営みを重ね堆積させることによって物語が未来へと継承され、自分がこの世を去った後も、その存在が物語の中に確かに残っていくのを感じることができる。内山さんの著書を読んでいると、そうした「生きる」ということの根源に、暮らしの「場」はつながっている、そうした重要性を考えさせられるのです。
内山さんはさらにこう言っています。「個人が普遍の人間へと変わっていく物語がみえなくなったとき、私たちは普遍の営みを自分自身のなかに発見できなくなって、漂流する個人でしかない自分に気づくようになった。そして、自分がなぜここで生きているのかもわからなくなった。そのことが自分らしさ、自分探しといった言葉を流行させ、しかしそのことは自己否定以外の何ものも生まなかったのである。」
つまり、現在と過去とをつなぐ「場」を失った現代人は、浮遊した空間で自由な「個人」ではいられるけれど、今の自分のことしか信じられない「個人」となってしまった。そんな「個人」が人生を全うするためにとても重要となるのが、暮らしの場を見直すことではないかと思います。
こうした「生きる」ことの根源と密接につながった「暮らしの場」を「再創造」していく実践的な方法論が、この本のテーマである「住まいのリノベーション」です。それは、「人生のゴールデンタイム」を楽しむことを否定するものでは全くありません。その楽しみに、「暮らしの場」をどのように絡めるかを吟味しようという提案です。セカンドステージを楽しみながら、同時に次のステージへ移行する準備にもなるような「再創造」の方法を考えてみたいと思うのです。
さらにこの本では、医学的な見地からも健康長寿のための住まいのあり方を検討したいと思います。その分野を担当していただくのが、予防医学を研究されている医学博士の星旦二先生です。
星先生は、先に紹介した立教セカンドステージ大学の講座に毎年ゲスト講師として来ていただいて講義をしていただいています。星先生は、日本は世界的な長寿大国ではあるけれど、その実は寝たきり老人が多い国なのだといいます。そんな寝たきりの長寿ではなく、できるだけ長く元気で活動し続けられる「健康長寿」を実現する上で見直さなくてはならないのは「暮らしの場」であると星先生は言います。
「住まいを見直すと人生が変わる」、それは事実です。
それほど住まいは人生に大きくかかわっているということでもあります。
さあ、人生100年時代にセカンドステージに突入したみなさん!健康で幸せな人生をデザインするために、その戦略をいっしょに検討していきましょう。どうぞ最後までおつきあいください。
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