朝日信用金庫(東京都台東区)は3月26日、一般財団法人民間都市開発推進機構(民都機構、東京都江東区)との共同出資で、「谷根千」(谷中・根津・千駄木)地区とその周辺での古民家再生事業、町並み保存事業を支援する「谷根千まちづくりファンド有限責任事業組合」を設立した。同日、同ファンドの設立記念セレモニーを都内で開催した。
同ファンドは、国土交通省が推進し、民都機構と地域金融機関が連携して地域のまちづくりの取り組みを支援する「マネジメント型街づくりファンド支援業務」の一環として組成するもの。静岡県沼津市、大阪市中央区、兵庫県豊岡市に続く全国4件目、関東以北では初の取り組みとなる。
資本規模は1億円で過去最大。朝日信金が5000万円、民都機構が5000万円を出資する。NPO法人たいとう歴史都市研究会(東京都台東区)と、まちあかり舎(東京都台東区)をマネジメント主体とし、谷根千エリアに数多く残る古民家など歴史的な建造物を保全・再生し、飲食施設や宿泊施設等として活用する事業に投資する。第1号案件として、谷中で古民家を再生した「和食レストラン」への投資を予定するほか、2~3件について検討を進めている。
マネジメント主体を代表してセレモニーに出席した、たいとう歴史都市研究会の椎原晶子理事長は「地域の古民家や文化を守ろうという動きを、世の中の大きな流れとして後押しできれば」、「ファンドの応援をいただきながら、谷根千地区と、広域には神田、湯島、本郷、上野の一帯を、江戸から東京への文化の残る貴重な『東京の顔』として守っていきたい」と抱負を語った。
民都機構の五十嵐芳彦常務理事は、今回のファンド組成にあたり「明治、大正の昔から存在する古民家を、元の形で保全・再生したい、そこで事業を営みたいという方々にお会いし、『守りたい』という本気の気持ちに触れさせていただいた。ファンド組成の意義はここにあると感じた」と取り組みへの手ごたえを示した。また、「防災、環境、賑わい創出といった地域の持つ課題を解決するために、地域の金融機関と一緒に応援させていただく。空き家、空き店舗のリノベーションを中心に、一定の役割を果たせていけたら」と抱負を語った。
谷根千地区を重要な基盤の一つと位置付ける朝日信金の橋本宏理事長は「東京都は、エリアにおける地域再生、地域創生が非常に厳しいと言われるが、今回のファンド設立を通じ、都市型の『地方創生』として今後の方向性が見いだせたのではないか」との考えを示した。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。