一般社団法人健康・省エネ住宅を推進する国民会議(大阪府四条畷市)は2月26日、健康と居住環境との関係性を研究者・専門家など国内外の関係者で共有する「健康・省エネ国際シンポジウム」を東京・大手町のホールで開催した。約100人が参加した。寒さや高温多湿な居住環境が健康に及ぼす影響について国内外の研究者らが意見を交換した。
前半の講演では、まず、寒さと健康に関して、スウェーデンのルンド大学医学保健学科のスティーブン=マイケル=シュミット准教授がスウェーデンにおける住宅と健康に関する取り組みでのポイントを共有。単に物理的な居住スペース(ハウス)としてではなく、暮らしというソフトの面での家(ホーム)の評価も重要だと強調した。また、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科の伊香賀俊治主任教授は日本での大規模調査の取り組みとそこから得られた結果の一部を紹介。寒さが健康に及ぼす幅広い影響を紹介した。
高温多湿な環境が健康に及ぼす影響に関しては、首都大学東京名誉教授の星旦二氏が沖縄県で寿命が低下していることについて、慢性閉塞性肺疾患が他の地域に比べて多いことに触れ、湿度の高い気候とコンクリート造などの家のつくり方が黒カビを増やしていることが関係しているのではという仮説を紹介した。
また、ベトナム建設省建築技術研究所のグエン・ホン・ハイ副所長とグエン・ソン・ラム同環境・省エネルギー部次長がベトナムの住宅行政に関して報告。国際的な連携により建物の省エネルギー化に関する研究は同国でも進みつつあるが、健康との関係性を定めた基準はなく、日本で先行している知見や技術の供与に期待を寄せた。
後半のパネルディスカッションでは、健康と住環境に関する研究開発でのベトナムとの連携にあり方について、国土交通省の担当者も交えて意見交換を行った。官の交流だけでなく、民間レベル、学術レベルでの連携を進めていく必要性を確認。日本の技術をそのまま輸出するのではなく、ベトナムの実情に即した、ベトナム型の健康省エネ住宅をつくる必要があるとの方向性で一致した。
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