ロスコ・らしさ研究所(大阪府豊中市)および平家の里「炭焼き・薪クラブ」は昨年11月、第1回「囲炉裏・薪ストーブのある暮らしデザインコンテスト」受賞作品発表会を、三重県伊勢市矢持町地区で開催した。
この日は、住民が800年前からなりわいとしてきた炭焼きの体験会や、地元の保育園児らによるコンサートなどもあわせて開催。県外から訪れた工務店関係者らが地元住民と交流しながら、都市部と里山のネットワークを築く中で、貴重な伝統技術とも言える炭焼きを活性化し、日本の生活文化として後世に引き継いでいけないか考えた。
今後は、空き家・古民家再生モデル事業などを視野に、今年4月から「事業運営・平家の里インストラクター養成研修」を始めるなど、多面的に地域の活性化を推進する。
同コンテストは、囲炉裏や薪ストーブを導入した住宅のデザイン案を競ったもの。昨年5~10月にかけて募集したところ、全国各地の工務店などから20件の応募が集まった。
審査員は、地域活性化伝道師(内閣府)の岸川政之氏をはじめ、コンテスト実行委員会の佐藤善秀代表や建築家ら5人。あえて提出要項を定めず募集し、プレゼン手法や暮らしの提案などソフト面も重要視した。「囲炉裏」「薪ストーブ」の部門ごとに、それぞれ最優秀賞1点、優秀賞3点、審査員特別賞を選出した。
囲炉裏部門の最優秀賞は、囲炉裏を離れとすることで家族同士が気兼ねなく食事を楽しめるようにした、コアー建築工房(大阪府堺市)の『炎で繋がる・広がる暮らし』。薪ストーブ部門では、家の中に棚田をつくるという大胆なプランを提示した大塚工務店(兵庫県明石市)の『北風と太陽と里山が同居人』が最優秀賞に輝いた。同案について佐藤さんは「この発想はなかった。プランを見た時、やられたと思った」と声を弾ませながら称賛していた。
“炭”が結ぶ縁
今回の催しの参加者は、ツアーの一環として前日に伊勢市駅周辺のホテルに宿泊。当日の朝は、矢持町の出身で、父親から炭焼きを引き継いだという佐藤さんが管理する炭焼き窯がある山中へバスで向かい、炭を掘り出す「炭出し」を体験した。一行は、同町に息づく炭づくりに対する理解を深めながら会場入り。会場では、発表会と一緒に行われた地元の保育園児や音楽グループによる「いろりコンサート」も楽しんだ。
全プログラム終了後は、会場内の囲炉裏を囲んで懇談会を実施。普段はあまり出会うことのない人たちが楽しく会話を交わす中で、住民からは「これを機に矢持町と関わりを持ってくれたらうれしい」と期待する声が上がっていた。会場には急きょ、地元伊勢市の鈴木健一市長も駆け付け、鈴木市長から「第2回では市長賞を授与する」との発言も飛び出した。
同コンテストへの応募者は、自動的に「平家の里炭焼き&薪クラブ」の会員となることで、炭や薪などの優待価格での購入や事前調達といったサービスを受けられる。佐藤さんは「このコンテストをきっかけに新しい需要・供給システムができ、里山再生につなげられれば」と期待を寄せる。
<受賞者一覧>
【囲炉裏部門】
◆最優秀賞
コアー建築工房(大阪・堺市)『炎で繋がる・広がる暮らし』
◆優秀賞
柘植工務店(愛知・名古屋市)「名古屋の家&岐阜の生家」
小野建築設計(京都・京都市)「暖びり暮らしの家」
萩原建設(三重・伊勢市) 「王中島の家」
◆審査員特別賞
泉幸甫賞: 里やま工房(兵庫・豊岡市) 「囲炉裏テーブル」
岸川政之賞: ベガハウス(鹿児島・鹿児島市)「五右衛門風呂のある山荘&箱火鉢」
【薪ストーブ部門】
◆最優秀賞
大塚工務店(兵庫・明石市)『北風と太陽と里山が同居人』
◆優秀賞
安成工務店(山口・下関市) 「木と共に暮らす~木と共に生きる~」
川口通正建築研究所(東京・文京区)「木竈(もくそう)」
武部建設(北海道岩見沢市) 「上川の平屋」
◆審査員特別賞
横内敏人賞: 佐々木設計(宮城・仙台市)「古民家移築再生の家」
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