「以前は社員や現場の職人にまで顧客主義が浸透していなかった」
当時の都田建設は、年間3棟前後の新築下請け+大小のリフォーム工事を紹介で請負う小さな工務店だった。蓬台社長は現場監督兼事務マンとして入社後、ローコスト住宅商品を開発。大手ハウスメーカー時代に気に入っていた仕様をベースに、価格を大手よりも坪20万円抑えた。
商品は期待通り順調に受注を伸ばし、都田建設は元請けとして年間20棟前後の新築住宅を供給する工務店へと変貌する。だが、「お客様のために考えた商品」という思いが強かったこともあり、会社の歯車は少しずつ狂っていく。そして前述の事件は起きた。
「お客様と直接接する担当者はお客様に誠心誠意尽くしていたが、他の社員や現場の職人にまで顧客主義が浸透していなかった。棟数が伸びるなか、細かなほころびが会社全体に蔓延していった」
モノ主義からの脱却
家を建て直すという事件を経験し、蓬台社長は仕事に対する考え方を大きく変えた。「それまでは、単に商品を売ろうとしていた」が、「自社が何をする会社なのかということを改めて考えた」という。
その結果行き着いたのは「商品は、本当に価値として伝えたいと思う自分たちの考え方や理念を伝える道具に過ぎない」ということだった。
「それまで向き合っていたのはモノ。モノの品質をよくしようと一生懸命だった。だがそれは反面、モノさえ良ければ、という意識につながる。注文住宅は建売住宅のように買って終わりではない。契約にいたるまでの説明や、契約後の打ち合わせ、建設過程の現場の掃除一つをとってもそう。そして引き渡し後のお付き合い。これらすべてが、当社が提供する価値なのだと気付いた」
その後蓬台社長は、「家づくりをきっかけに楽しくなる人生の送り方」を広めることを都田建設が提供する価値の本質と位置づけ、社員や職人への浸透を図っていく。
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