工務店が奪回すべきポジション
地域の一員としてのポジショニングは商売においても非常に大きなアドバンテージとなります。そもそもマーケティングの構築は、ポジショニング(立場)とセグメント(限定)を切り離して考えることはできません。地域を絞って、そこで共生する事業所とのポジションが認知されたら地域住民は何かある度にこぞって工事の依頼に来るでしょう。
昔、街に必ず一人いた『出入り大工』がそのシステムであり、その当時の大工さんは競合もなく、値切られることもなく、未来に不安を抱えることなく気持ちよく大工仕事に精を出していたのではないかと思います。
今は時代が変わり地域の繋がりも希薄になり、広告宣伝による告知やインターネットでの検索で工事の依頼先を選定するようになりましたが、私たちはもう一度原点に立ち戻り地域との繋がりを深めて近年工務店が失ってしまったポジションを取り戻すべきです。
そのためには「何かあったらあの会社に頼みに行ったらいいわ」と思われることが重要で、小工事やメンテナンスで関係性を紡ぎながら、絶対的な信頼を勝ち取ることで地域の住宅が潜在的に持つライフタイムバリュー(顧客生涯価値)を全て手に入れることができるようになります。小さなきっかけでもご縁があった顧客と繋がり続ける仕組みを持つことで未来の売り上げが作れるようになるのです。
因みに弊社の場合はどんな小さな工事でも一度お付き合いを頂くと、それからずっと1年に1回以上、大工が無料メンテナンス訪問に伺って、1時間程度で済む営繕工事は全て無料で行います。この大工による無料巡回訪問の仕組みが機能し始めてからお客様からの紹介、リピートの受注が圧倒的に増えて、広告宣伝を全てやめた経緯があります。
ここでもやはり鍵になるのは施工力であり、職人です。職人起業塾にご参画いただいている企業は大工や設備職人等を社員として正規雇用し、次世代の若者を育てる取り組みを進められている、もしくはこれから職人の内製化に取り組もうと考えておられる会社がほとんどです。しかし、業界全体を見渡すとまだまだ職人を労働法に則って雇用している会社は極々少数で、お抱えの大工がいると言っても忙しい時はいいですが、少し着工現場が空くとなんの保証もしない外注扱いになっているのがその実情で、工務店はリスクを負いません。
今後、50代、60代で現在活躍している職人たちが引退して圧倒的な職人不足の時代に突入した時、そのツケを払わされるようになるのではないかと心配しております。そして職人もまた地域住民の一人でもあります。将来の長きに渡り地域の一員として認められ安定的なポジションを確立し、マーケティングを構築するには職人を守り、育てる姿勢が必要だと強く思う次第です。
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