マーケティングは『在り方』から
「あらゆるモノは陳腐化する」とピーター・F・ドラッカー博士は言いました。経営理念もやっぱり時代の流れ、人の入れ替わり、経営者の成長や成熟に伴い必ず陳腐化します。経営理念とマーケティングは別物だと思われる方もおられるかも知れませんが、どの様な事業においても先ずは「なんのために?」という問いに対する答えを経営者、従業員、協力業者、職人の顧客に関わる全ての人と腹の底から理解し、共有する事が必要だと考えます。そして、この部分こそがビジネスモデル、理論構築の基礎であり、常にPDCA のサイクルを以てブラッシュアップを繰り返すべきではないでしょうか。
弊社でも今年に入って経営理念を刷新しました。それまで掲げていた経営理念「建築業を通して地域社会に貢献する」では、地域社会とは身近な者から、先ずは社員、そして協力業者や職人の生活の安心・安定を優先し、それが出来てこそ顧客・地域住民への貢献が出来る、と説明してきました。それをより分かりやすく、事業の目的を明確にするために「もの作りの本質、作り手を守り育て地域社会に貢献する」と書き換えました。私が主宰する『職人起業塾』に参加されている企業の経営者には、現行の経営理念が本当に従業員や協力業者に理解、納得されているか、普段の業務の指針となっているかを繰り返しチェックしてもらっています。
ジェイ・エイブラハムのマーケティング理論を学ばれた方の殆どは、マーケティングの入り口、基礎は『在り方』だと口を揃えて言われます。自らの在り方を正し続けなければ持続・継続出来るビジネスモデルの構築は叶わない、そして、その在り方は顧客接点の全てで発揮出来てこそ、はじめて意味をなすと。そして、世界で最も読まれているビジネス書、『7つの習慣』の中の第五の習慣にも「まず理解に徹し、そして理解される」という一文があります。「今だけ、金だけ、自分だけ」とは全く逆の「長期的な視野を持ち、目先の利益に囚われず、他者貢献を優先する」アタリマエと言ってしまえばそれまでですが、人としての信頼を勝ち得る原理原則に則ったパラダイムを社内に浸透させる事が出来なければマーケティングという未来の売り上げを作り上げる理論構築をなし得る事は出来ません。
非常に時間がかかり、面倒な手間ではありますが、何度も繰り返し『なんのために?』を考え、自分達の『在り方』を正し、その解を経営者と共に顧客接点となる全てのステークホルダーが共有出来る組織づくりこそ、生涯顧客を創造する状態へと歩を進める第一歩となります。まさに『状態管理』の基盤を造り上げる事が出来るのです。
第3回のチェックポイント
●「経営理念」陳腐化していませんか?
▢ 社員の「実務上の判断基準」として、経営理念が機能していますか?
▢「 今だけ」のパラダイムから抜け出せなくなっていませんか?
「在り方」を正すことが未来の売り上げ= 生涯顧客をつくる
「なんのために?」を問いかけよう
状態が整えば後は行動を起こすのみ。しかし、やらねばならない=やる、と単純に行動に移せる人は意外と少ないもので、特に職人や現場監督といった現場実務者は、技術者特有の硬い殻に閉じこもり変化への拒絶反応を示しがちです(私も大工出身ですが)。しかし、行動を起こすのは経営者ではなく、あくまで顧客接点である実務者でなければなりません、マーケティングプラン、アクションが奏功するか否かは現場実務者の意識改革にかかっていると言っても過言ではありません。
事業は目標設定と問題解決の繰り返し。そして解決すべき一番大きな問題は『顧客接点』であり『現場従事者の意識』です。引き続き職人の意識改革を基盤として販促を一切無くし、年間受注の95%をリピートと紹介で賄うようになった私達が取り組んで来た職人的マーケティングの要諦を具体的にご紹介します。
高橋 剛志 たかはし・たけし
すみれ建築工房(神戸市)代表。大工。自身の苦しい経験から、職人が安心して将来設計を考えられる環境こそ工務店を強くすると実感。マーケティング理論を職人に教えることで、最大の顧客接点である職人自ら営業の役目を果たしてくれると実践し、広告・販促なしで5億円の売上を達成。社員向け勉強会からスタートした「職人起業塾」は、口コミで広がり他社社員、JBN阪神など多くのネットワークを巻き込む動きとなり国交省公認教育事業に認可されている。住宅に加え、 店舗設計も多く手掛ける。社員20人。
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