第3回 「なんのために?」が基礎構築の第一歩
「経営を圧迫する急激な職人不足と販促費の増加。仕事をつくるための販促費の捻出のために、職人の賃金を抑え、結果として、仕事が取れても仕事をする職人がいなくなるという悪循環にはまる。すみれ建築工房(兵庫県神戸市)の高橋剛志社長は、販促費にかかる経費を職人のために回すことで、意識の高い職人を強みとしたインバウンド・マーケティングを実践し、業界の抱える悪循環の克服に取り組んでいる。その極意を全12回の連載で伝えていただく。(編集部)
足元から、確実な一歩を
前回では、マーケティングという概念を『セールス(売り込み)を無くす事』そしてその目的は『生涯顧客の創造』であるとシンプルに再定義しました。顧客との絶対的な信頼関係を構築し「建築にまつわる事は一生御社にお願いします」と言われる状態をつくり出す事が、未来の売り上げを見込める経営資産の蓄積にほかなりません。そして、情報化革命によってもたらされる『本物の時代』の到来に対して、表面的なウリではなく自社の持つ内面の価値に磨きをかけ、顧客に長期的かつ本質的なバリューを提供する事がその信頼を確固たるものとし、口コミを巻き起こす=市場に見つけられる情報発信となる。すなわち、工務店にとってインバウンドマーケティングの重要性についてもお伝えしました。
今回からはその理論を実践に落とすべく、足元から順番に構築方法の解説を進めたいと思います。基礎構築は大変重要ですのでじっくり説明します。遠回りのように感じるかもしれませんが確実な一歩です。
ビジネスモデルとは理論構築である
マーケティングへの取り組みの全体像・目指す方向が明確になり、生涯顧客の創造によって将来にわたって自然に集客、売り上げが出来上がるイメージが出来れば後は実践に取り掛かるだけです(イメージできなければ、繰り返し第2回を読んでください)。
P(顧客の信頼を得る方法論)D ( 誰がどのように行なうか)C(生涯顧客となっているか)A(量と質の改善)のサイクルを繰り返す事で、段階的、螺旋的に販促に頼らないビジネスモデルが完成に近づいて行くはずです。
販促に頼らない=反響営業からの脱却は外部環境の変化が激しく、また大きく左右されやすい建築業界において先行きの不安を解消すると共に、麻薬のように使い続ける多額の宣伝広告費を浮かし利益構造を一変させます。まさに骨太の地にしっかりと根を張った自立循環型経営への転換の第一歩となります。
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