信頼を得続ける状態を管理する
モチロン、顧客から選ばれる為にはデザイン力や資金計画をサポートするコンサルティング能力、価格の優位性や商品力、地域密着の企業としての世界観や提案力といった工務店としての強みも必要です。しかし、それらばかりに執着していては、本当の意味での生涯顧客の創造は叶いません。集客からクロージングまでのプロセスだけを重視していては、いつまで経っても狩猟民族の様に常に新たな顧客を捜し続けなければならないスパイラルに陥ってしまいます。
あくまでも工務店の本質はモノづくりであり、物売りでは無いはずです。その本質を考えたとき、最大の顧客接点であり、顧客にお渡しする商品そのものを作る大工が顧客に「一生あんたにお願いするね」と言われる『状態』を整えなければせっかくの集客もストックとならず、一時的なものになってしまい、未来の売上げが見えて来る事は無いのです。
このリスクを回避するにはどうすればいいか?と考えたとき、私が見出した答えは、創業時の自分自身の経験でした。起業したての大した強みもない単なる大工だった私が顧客に重宝がられ、受注を重ね、信頼を得て来れた源泉は、そんな自分に仕事を依頼してくれた顧客に感謝して、一生懸命に働く事だけでした。モチロン、期待を絶対に裏切らないという誠実さがそのベースにあったのは言うまでもありません。
任天堂の故・岩田聡社長の語録に「自分のコピーがあと3人いればいいのにって思ったことがあるんです。でも、いま振り返ると、なんて傲慢で、なんて狭い視野の発想だったんだろうと思うんですよ」という談話がありましたが、私の場合は傲慢でもなんでもなく、実際のモノづくりをして、顧客との現場接点となる大工が経営者と同じ感覚を持っていなければ生涯顧客を作る事は出来ないと気付いただけです。そして、そのためには決して会社として(社員の)行動を管理してコントロール出来るものではなく、「状態」を作り出すしかないと思ったのです。
マーケティング戦略の担い手は絶対に顧客接点を持つ実務者であるべきで、現場でその効果を発揮して結果と評価を生み出してもらわなければなりません。その状態を整える事こそ、インバウンド・マーケティング構築の基礎を固める事になるのです。
第2回のチェックポイント
なぜ「状態」が一番重要なのかを理解できましたか?
ヒント ●状態管理すべき会社の資本とは何か?
●マーケティング戦略の担い手は?
状態管理はすべての問題解決の鍵!!
高橋 剛志 たかはし・たけし
すみれ建築工房(神戸市)代表。大工。自身の苦しい経験から、職人が安心して将来設計を考えられる環境こそ工務店を強くすると実感。マーケティング理論を職人に教えることで、最大の顧客接点である職人自ら営業の役目を果たしてくれると実践し、広告・販促なしで5億円の売上を達成。社員向け勉強会からスタートした「職人起業塾」は、口コミで広がり他社社員、JBN阪神など多くのネットワークを巻き込む動きとなり国交省公認教育事業に認可されている。住宅に加え、 店舗設計も多く手掛ける。社員20人。
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