富山県高岡市の地域工務店・プロデュース。本業の住宅事業に加えて、インテリア・家具、カフェ・レストラン、ウェディング、まちづくりと事業領域を拡大することで、一人ひとりの顧客と生涯にわたってつながる『生涯顧客化』を実践している経営手法が注目を集める。
新川篤志社長は、縮む住宅産業市場で、企業の二極化と選別淘汰が加速する中、「小さな工務店こそ、いますぐ生涯顧客をつくる仕組みを整えなければ生き残りの道はない」と訴える。自社が培った生涯顧客化のノウハウを広く提供することで、「志を同じくする全国各地の地域工務店の皆さんに、それぞれの地で輝いてほしい」と願う新川社長に、地域工務店による生涯顧客化の道筋を聞いた。
新川篤志 社長
しんかわ・あつし●プロデュース(富山県高岡市)代表取締役。1972年生まれ、富山県射水市出身。大工として建築に携わり、建築の歴史と奥深さを知る。「より多くのお客様の幸せをつくりたい」と2003年同社起業。「しあわせと笑顔の創造」を掲げ、地域に必要とされる企業を目指した結果、11年連続増収・増益を達成。地域に根差した店舗や企業の設立・運営の総合支援にも取り組む
生涯顧客と向き合う
今後の住宅産業市場は、ビルダーや工務店など規模も含めて二極化が加速し、それにあわせて企業の選別淘汰が進むと予想しています。そうした市場で、地方の小さな工務店が元気に経営を持続するためには、必然的に限られたエリアでの顧客との関係を深めていく以外に道はないと思います。それを具体化することが「生涯顧客化」であり、それは地域工務店にとって、生き残りの前提条件とも言えるのではないでしょうか。
そうした市場の動向も見越したうえで、住宅事業をきちんと行うことは当然として、暮らし方の提案や、さらには住宅単体ではなく、まちづくりや地域活性化も含めて地域の豊かな暮らしづくりに工務店が主体的に携わっていくというのが私の理想とする生涯顧客化のあり方です。カフェ・レストランやウェディングといった事業は、地域を元気にする、まちににぎわいを取り戻すといった理想を実現するためのツールに位置づけています。
営業をしない建築事業を確立
当社は現在、人口約17万人の高岡市内で、建築(新築・リフォーム)を核に、不動産、インテリア・家具、カフェ・レストラン、ウェディングといった事業を展開しています。建築と不動産以外の事業の本格スタートは6年ほど前。年間売上は10億円余りで、グループ全体の従業員は50人ほどです。
そのうち工務店としての売上は約7億5000万円で、商圏は半径5㎞以内。建築に携わる社員は10人で、そのうち女性が7人を占めます。新築は年間20棟程度、リフォームは大小あわせて約280件を手掛けます。ほとんど営業を行っておらず、追客も一切しません。9割以上が紹介とリピートですが、すでに現時点で年内の仕事は目いっぱいで、これ以上は受けられない状況となっています。
こうした状況をつくり出す大きな要因となっているのが、他の事業を通じてのお客様や地域の人たちとの接触であり、全体の認知度やブランドの浸透なのです。ただ私はこれを“多角経営” とは考えていません。「幸せと笑顔をつくる企業体」として、全ての事業を通じてライフスタイルを創造し、提案しているのです。建築についても「暮らしの物語や夢をつくるのが自分たちの仕事だ」と考えてきました。ですから、いまの形を地域工務店が行うべき“総合的事業展開” だと考えています。
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