前川國男自邸
記者になったとき教科書として手に取った「昭和住宅物語」(藤森照信)は定期的に読み返す愛読書のひとつです。先日も読み返していたら、前川國男の記述のところに気になる一説を見つけました。
前川が「プレモス」と呼ぶ木造の量産住宅に取り組み、結果として失敗したことは、前川の建築をたどったことのある人にはよく知られた事実だと思います。プレモスは床壁をパネル化した木の小さな箱で、小さな家のプロダクトと言えるかもしれません。もの自体は終戦直後(昭和21年)ということもあり、前川らしい魅力はそれほどなく代替住宅的に使われたようですが、1000棟を生産して役割を終えました。
藤森は「昭和住宅物語」のなかでこう書いています。
(前略)プレモスが、前川國男というモダニズムのエースにより手掛けられながら結局失敗に終わった、ということろに僕は感慨を禁じえない。
なぜかと言うと、戦後の時間を一貫して、日本のモダニズム建築家の中には、「量としての住宅に取り組まなくてはならない」という、国民のために働く建築家としての使命感があり、また「住宅を工業生産のラインに乗せてみたい」という工業化の時代に生きる建築家としての夢があり、この使命感と夢が結合すると「プレハブ住宅の開発」という行動に向かい、そしてなぜか必ず失敗する。
国民のために働く建築家としての使命感。現在、特に震災後の建築家、設計者の使命感はなんでしょうか、あるのでしょうか、と偉そうに思ったりします(ページ2に続く)。
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