NPO法人フェーズフリー建築協会が主催する「第1回フェーズフリー住宅デザインコンペ」の表彰式が9月8日都内で開催され、応募55作品から選ばれた入賞作4作品と入選作13作品が表彰された。
審査員の三井所清典日本建築士会連合会会長、目黒公郎東京大学教授、松崎元千葉工業大学教授とフェーズフリー建築協会からそれぞれ表彰状が授与された。
「災害時に生活の質を落とさないこと」が条件となるフェーズフリー住宅の初のコンペとなった今回は、「シェアハウス」と「土間」などの提案が受賞した。
「生活の質を落とさない住宅」を求めるフェーズフリー住宅については、応募者の約3割の人が「ご近所付き合いの場」や「言葉を交し合える空間や動線づくり」などコミュニティをテーマに挙げ、「家庭菜園」、「薪ストーブ」など、コミュニケーションツールも紹介された。
三井所清典賞を受賞したのは名古屋市立大学の前田直哉さんの作品。三井所氏は、「2階建ての1階部分を共生の精神で作られた『セミプライベートゾーン』としたシェアハウスの提案。災害時には近隣の人を迎え楽しむ仕組みを取り入れた『セミパブリックゾーン』に転用できる概念」を高く評価した。
目黒公郎賞を受賞した愛知の篠田望さん(篠田望デザイン)の作品。篠田さんは、東大で目黒教授の講義を聞き、「災害時のことを創造する力(イマジネーション力)」を働かせることで、1人でも復旧がし易い家を提案したという。目黒教授は、防災対策に求められる事前対策として「被害抑止力」と「被害軽減力」「早期警報能力」、事後の対策として「被害評価」「2次災害対応」「復旧」「復興」を挙げ、「住宅の中に一番多くの対応が適切に盛り込まれた作品」として選定した。
このほか、フェーズフリー建築協会賞では、齊藤信正さん(Travelbag)の「土間がつなぐ家」が受賞。協会では「日常から土間が家族と地域を受け入れる楽しい暮らしの中心にあり、いち早く災害を察知することができるほか、土間を開け放つことで洪水による床下浸水を防ぐとともに、復旧までの容易さも見逃せない」と評価した。
松崎元賞を受賞した河中宗一郎さん(北海学園大学大学院)の作品は、地震災害による家具転倒防止のため、生活スペースの下に納戸をまとめた独創的な住宅。生活用品のデザインをテーマとしている松崎元氏は「災害時に住宅だけではフェーズフリーな暮しの提案はできない。設備や生活用品の収納システムにも可能性を広げた優れた提案」とした。
三井所氏はまた「新潟の中越地震の際は、被災後の山古志村の人々が菜園作りに精を流したことで新たなコミュニティができ共同直売所の実現につながった。日常から地域が共同作業できる活動をすることで、災害時も困らないフェーズフリー的な仕組みが可能になる」とフェーズフリー住宅の枠組みを超えた可能性にも言及した。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。