新建新聞社は6月22日、地域で活躍する工務店8社の経営者を招き、各社が現在挑戦している取り組みを共有する「工務店経営カンファレンス2017」を開催する。
新建ハウジングDIGITALでは、登壇者のインタビューを集中連載する。
サンプロ 代表取締役
青柳 弘昭 氏
1996年創業。塩尻市を中心に限られた商圏で継続した売上を上げている。多角化し顧客に長期的な価値を提供する「トータル住生活事業」の展開が注目ポイント。
永続する会社になるため
「挑戦」を繰り返してきた
職人から24歳で起業し、リフォーム会社を経て新築、不動産事業もスタートしてと、徐々に拡大してきました。弊社は長野県にあり、この限られた商圏の中で永続を目指しながら、色々なビジネスモデルを試してたどり着いたのは、どれだけ事業を多角化して、収益性を上げていけるか。競争の主眼は、お客様から、いかに他社よりも多く声をかけられるかということ。言い換えれば他社を負かすのでなく、収益性を高めて売り上げを安定させることの方が大事。そして収益性を高めるには価格を上げるか、コストを下げるかの2つの方法しかありません。
多角化展開で潜在するニーズに訴求する
スマートに言えば、LTV(生涯顧客価値)+ストック循環型のビジネスモデル。顕在しているニーズを他社と奪い合う消耗戦を避け、顧客の人生において潜在している住生活関連の需要を掘り起こすため、日常からいかに多くの接点を持てるかということ。家を建てたい、土地が欲しいと思い立ったとき真っ先に弊社を想起してもらう。そのために何をするかを主眼に置いています。簡単に言うと、住生活に関わるチャンネルを増やして多角化していく。シナジーが大きいものから取り組んできました。どこかのチャンネルに接点を持った顧客を「サンプロの顧客」として抱え込みながら、全体を「サンプロの経済圏」として事業を展開する。これが「トータル住生活事業」と呼んでいる戦略のイメージです。
ポジショニングが収益性を高める
一つひとつの事業を成功させるため必要なのは、競争優位を生むためのポジショニング。例えばリフォーム市場は成長過程で魅力的に見える一方、収益性が高いとは限らず、高成長と低い参入障壁の組み合わせが収益性の低下を招いています。なので、幅が広いリフォーム事業の中で、一番になれるポジションを決める。自社のエリアを踏まえてマーケティングを行うことです。競争要因の影響が最も弱い部分にポジションを確立し、占有率を高めていく。
リフォーム専門会社でいかにもという店舗を構えていた10年前は「1000万円のリフォームなんておたくにできるの?」と言われました。それを新しい店舗を移転オープンしたタイミングで、ターゲットを上位にシフトするようポジショニングを行ったのが最初の転換期です。
ファンが増えればブランドになる
もともと魚屋から私の社会人人生はスタートしているのですが、マグロの解体をお客さんを集めて目の前でばりばりやると、いい値段のマグロが飛ぶように売れていく。試食して「美味しい」と言ってくれる。演出によってお客さんの行動や心理は全く変わってくることを学びました。耐震性や省エネルギー、耐久性などアタマに訴求する機能的価値は当然必須。あわせて、非日常やラグジュアリー感、リゾート、感動などココロに訴求する情緒的価値で違いをつくることが大事です。
こうして「売りたい」から「買いたい」価値が提供できるように変われば、ファンが増えてきます。ファンになってくれる人が増えれば自ずとブランド価値が向上して、こちらから求めに行っていたもの、顧客、情報、チャンス、そして人材と、矢印がこちらに向いて集まってくるようになる。県外からわざわざ働きたいといって移住してきた人間も増えました。地方はネガティブトレンドばかり語られがちですが、いい流れができるとプラスになることもあります。各地の工務店と共により大きな流れをつくっていきたいと考えています。
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