ドラッカーは小さな会社について、「際立った存在となるための戦略を持たなければならない。ニッチを見つけなければならない。現実には、ほとんどの小企業が戦略を持たない。機会中心ではなく、問題中心である。問題に追われて日を送る。だからこそ小企業の多くが成功できない」と述べています(出所:「マネジメント」)。
これは耳の痛い言葉です。僕も含め、「売上げが落ちている。なんとかリカバーしなければ」とか「競合が値下げしてきた。こちらも値下げを考えなければ」などなど、問題への対応に追われて1年が過ぎていきます。機会中心に生きないと、と思います。
そのために必要な際立った存在になること、ニッチを見つけること―これらは、規模が小さな会社ほど、原則的には簡単になります。しかも、ネットの進化やコラボレーションの可能性によって、規模はこれまでの常識よりも小さく維持しながら、際立った存在になれるニッチな市場を占めることが可能になっています。
出版業なんかがいい例で、もう「編集部」という固定費がかかる体制がなくてもメディアを出すこと、運営することは可能になっていますし、ネットメディアや電子出版(利益をあげるのは大変ですが)ならなおさらです。
これまでは採算ベースにのらなかったニッチメディア(ミドルメディアといったほうがいいかもしれません)でも世に送り出すことができるようになっています。
これからは、「スモール・イズ・ビューティフル」の時代、小さから強い、小さいから楽しい、ということが、堂々と言える時代だと思います。
ただ、それは「得意であること」「情熱を燃やせること」に集中できることが前提となります。またニッチであっても、少なくても確実に顧客が存在していて、それが増やせる余地があること(できれば追い風が吹いていること)も前提となります。
その意味ではやはりドラッカーが言っているとおり「我々の事業は何か、顧客は誰か」ということを考え抜くことが、小さな企業ほど必要だということになります。
そのときに、一企業=一事業である必要はありません。工務店でも、「得意で情熱を燃やせる事業」を小さくいくつも生んでいき、社員に社長をさせて子会社化する手があります。
これは適正規模の維持と社員のモチベーション(=ポスト)の維持と事業継承のリスクをバランスして企業を持続していく一つの方法です。ドラッカーは一人が適切に管理できる人数は12~15人だと言っていますが、これを超えたら自己分裂を考えるべき時代なのかもしれません。
三浦祐成(編集局長)
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