浜松建設(長崎県諫早市)は、ほかにはない個性を発揮している工務店だ。住宅会社であるとともに、「風の森」という名称でも知られている。カフェに雑貨屋といったコミュニティを地域の山を切り開きながら長い時間をかけてつくり上げてきたのが代表の濵松和夫さんだ。
現在はテレビやラジオといった放送に登場しながら知名度を高めつつ、「いかにこの何もなかった山に来てもらうか」を念頭に置く。「山にはすべてがある。それを伝えたいんです」という。その伝え方とは─。
元々事務所のある山に来てもらうためのストーリーを設定しているという。「訪れたお客さんに驚きの声をあげてほしい。結局、感動させることがすべて」と濵松さんは話す。
材木屋としてスタートした同社は、雲仙普賢岳噴火を機に工務店へと方向転換し、場所を移しながら業務を継続してきた。事務所を町中に構えた同社だったが、濵松さんが代表になるに従い事務所を山中に移すことに決める。「それも、当時は本当に何もないただのミカン畑。両親や周りの人間からはとにかく猛反対されました」「ただ、なぜか確信があった。山にはすべてがあるんです」今では、初めから「今のような」癒しを求める時代を予期していたのでは?と、そんな質問ばかりされるという。
当時から今まで、濵松さんの頭の中にあったのはただ一つで、すべてストーリーがつながっていると濵松さんは言う。「この一つの山に、人が集まってくるストーリーを作って、そのためにいろいろな要素を設けてきた」と話す。それを多様な方法で伝えてきた。
明確なコンセプトをもった同社。リアルな場として「風の森」という着地点を用意しながら、冊子の作成や濵松さんの地元メディアへの登場、テレビCM など多岐にわたる。現在力を入れて活用するのがiPadを使ったデジタルカタログだ。3D でモデルハウスを案内しながら、実際にその中にいるかのような案内もできる。
今年も5人の新入社員を採用する同社。なぜこのようなツールを導入するのか。濵松さんは「どうして新卒を採用するのか、という答えにも似ている。代表である自分のやりたいよう、より良いようにとやってきた結果、非常に複雑になってしまった。新卒が入れば社員たち自身がルールを作ろうとします。その時にこうしたツールは非常に意味がある」と話す。
舞台裏では情報共有も徹底してICT化を行っている。例えばクレームの共有。一つのクレームに対しても全員が目を通すことになり、社員一人で抱え込まない。どう処理したかといったことが社員のだれかの頭の中だけでなく、しっかりと会社の財産になっていくわけだ。顧客管理にも当然システムは導入されている。社長だけでなく、社員全員が全体の受注状況や工程を把握することでより質の高い対応が取れる仕組みになっている。
レベルの均一化にも役立っている。「iPad を見ながら会社の概要を説明すれば、入ったばかりの社員でも会社のやっていること、やりたいことを伝えることができる。こんな家を建てていますよということについては3D モデルで見せる。かなり実感を持って対応できていると感じています」こうした姿を見た先輩社員たちが中心にルール作りを進めていき、より働きやすい会社へブラッシュアップされていく。
濵松社長は、4月開催の「大人気工務店に学ぶ!ICT活用セミナー 今日から脱アナログ工務店!」(主催:新建新聞社・新建ハウジング)で講師として登壇する。
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