そもそもCXを向上させる意味は何か?
なぜ改めてCXなのか。住宅建設業をサービス産業として捉えてみる。
そもそもCXを向上させる意味は何か。より良い顧客体験が生じたその先の「効果」として考えられるのは自社のブランドイメージの向上、既存顧客による宣伝効果、リピーターや紹介顧客の獲得、さらには顧客の生涯顧客化による再受注機会の獲得などだ。
ところで、こうした「効果」を期待すべきだと考える背景には事業環境の変化がある。すでに多くの読者の共通理解となっているように、住宅産業は少子高齢化や社会構造の変化により需要総量が縮小(市場縮小)、一方で新・性能基準への対応や資材価格の高騰、調達不足などにより価格転嫁を余儀なくされる環境変化にも直面している。
変化への対応が進み、製品の機能である性能基準を示す水準は義務化によってそろい、建築サービスにおける資材・建材の調達手段もコストの観点から集約されてゆくことを考えれば、住宅事業において製品(=住宅というハコ)のコモディティ化がさらに進むのは自然だ。少なくとも知識や経験、情報の乏しい顧客から見える製品の差別化は難しくなり、極論を言えば、ネット上の商品棚に並んだ時期と価格とハコの見た目でしか選ばれなくなる。
サービス業の4つの特徴
製品自体が持つ価値での差別化が難しくなったその先で、住宅会社はどう差別化し選ばれる存在になるのか。先ほど「建築サービス」という言い方をしたが、一般的にサービス業には、①無形性、②同時性、③変動性、④消滅性という4つの特徴がある。
特徴①④はサービスが無形でありモノとして残らないことを示すが、ゆえに顧客に心理的な価値を与える必要性につながる。特徴②はサービスの提供と消費は同時に起こることを示す。つまり、良い取り引き(交換)とは、事業者と顧客の協働によってしか生まれないことを教えてくれる。特徴③は顧客の多様な求めに応じて対応する必要があることを示し、これは事業者の絶対的な基準だけで製品・サービスを提供し続けるのではなく、顧客をよく理解した上でサービスを提供すべきことを理解させてくれる。
改めて住宅建設業の業務過程を見直してみると、顧客の問い合わせ対応や相談対応の過程はサービス業の特性①③④をもつ過程であり、設計の打ち合わせやプレゼン時間はまさにサービス業の特徴②の性格をもった過程そのものだとわかる。
建設業を製造業として単に棚に並べる製品(住宅)を要求された水準通りに生み出すことが自社の仕事と捉えるのではなく、サービス業として捉え、提供サービスの過程におけるCXを注視する。サービス(相談対応や設計提案、施工、引き渡し、アフターなど)の提供過程である検討段階から、引き渡し後に至る全ての過程において顧客と共に顧客の満足を創り出すようなサービスを提供するために何をすべきか。この連載で読者の皆さんとともに引き続き考えていきたい。〈続く〉
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