個性出し、幸せなマッチングを
家づくりにおいても、大手の方がいいという感覚を持つ人は私の周りでも少なくなってきている。確かに大手メーカーで家をつくるほうが楽だが、そこで想定される暮らしを与えられるだけ。
むしろ3.11以降、地域、地球環境に配慮したいと思う、いわゆるソーシャルネイティブの皆さんがいま20代〜30代の子育て世代になっている。彼らは、パーソナルな建築を、顔の見える人につくってもらいたいというニーズが高い。自分の思いがエネルギーロスなく伝えられる距離感でものをつくってくれるプロフェッショナルとしての工務店さんの役割は今後一層強く求められる。彼らが家づくりに対して欲している感覚と、工務店さんが持っている技術は相性がいい。
自分たちの家づくりが地域のローカルプロジェクトとして、施主・工務店の両者がワクワク感をもって建築が進められるようなかたちが増えていくことで、社会がもっと住み良い街、住み続けられる街につながっていく。
現在各工務店さんがYouTubeやSNSなどを通じて、生活者に向けて家づくりのプロセスを公開したり、価格の意味を説明しているなどの情報発信が活発になっているのはすごく良いことだと思う。
工務店さんのなかでも情報発信が進み、多様な個性の粒立ちが見えてくると、住まい手との幸せなマッチングが生まれる。
場所の記憶を生かす建築を
以前、建築家の隈研吾さんに「借時間」という考え方を教えてもらった。「借景」に似た考え方で、50年、100年前から蓄積してきたその場所・空間に立つときに感じられる気持ちの高ぶりや高揚感を建築的に生かすこと。
この点、工務店のみなさんも、専門的な勉強でないにしても、子どもの頃から、暮らしの中から地元のまちの歴史を受け取り、その借時間を潜在的にでも理解した上で家をつくっているはず。こうした記憶はその街で育ち暮らしている人間でしかなかなか理解できない。そうした感覚をもつ人が地元の家づくりやまちづくりに携わることが大事。この点でも地域工務店の活躍を期待している。
この記事は最新号『新建ハウジング紙面 5月20日号 14面』に掲載しています。
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