「すべてはお客様のために」を掲げる納得住宅工房(静岡県富士市、久保淳社長)。
新規の開拓・集客には目もくれず、目の前にいる顧客とOB施主だけをとことん大事
にする独自のスタイルで年間150棟の注文住宅を請け負う。久保社長の家づくりに
対する考え方を全国の工務店にぜひマネしてほしい。
久保淳 氏
納得住宅工房代表取締役社長/納得スタイルホーム会長
社員35人で売上げ30億円超
創業は2001年。静岡県内に4つの拠点をもち、1年間に手がける新築は150 棟、売上げは30 億円を超える。社員35人のうち営業職の「コンシェルジュ」は半数程度。生産性は高く、設計や経理を含む全スタッフが1人あたり1億円近くを稼いでいる計算だ。
「“1人1億円” は、創業当初から掲げてきた数字。まず資金的に“健全な会社” でなければ、お客様と誠実に向き合うことはできない」と言い切る。
高い紹介受注率で集客不要に
広告宣伝費は売上げの2%未満。基本的に新規の集客は行わず、毎年150棟もの受注を同社で家を建てたオーナー(OB 施主)たちが支えている。
その紹介率の高さは業界内でも有名で、平均70%以上にのぼる。なかには84%を紹介でとるコンシェルジュ(住宅営業)もいるという。
「お客様は、建てたあともずっと守ってくれるパートナーとして住宅会社を選んでいるのに対し、多くの住宅会社は建てたら終わりで、定期点検すらまともにしないところもある。私からしたら、そんな姿勢はありえない。オーナーさんと一生関係を続ける前提で、お酒を飲んだり、BBQをしたり、日常的に信頼しあえるつきあいをすべき。それが住宅営業の仕事」。
久保社長が住宅営業に求める資質は「嘘をつかない」こと。決まった営業ステップや営業トークはなく、各人のキャラクターを生かし、得意な方法でオーナーと関係を築けばいいという。
オーナーが循環するしくみ
もちろん、コンシェルジュの力だけで70%超の紹介受注率をキープしているわけではない。「圧倒的な商品力とデザイン力、ホスピタリティ、職人力、そして建てた後のオーナーさんを循環するしくみが確立しているからこそ、地域で支持され、コンスタントに紹介をいただけるのだと思う」。
イメージはファンクラブだ。「ミュージシャンがよく知らない人の前で歌うよりも、ファンクラブの前で歌ったほうが断然いい反応が返ってくるのと同じで、オーナーさんに自社のファンになってもらえば自然と次のオーナー候補を連れてきてくれる」。
納得住宅工房では、ファンたちが気軽に、日常的に立ち寄れる場として、レストランとアパレルを展開。地域の人も自由に利用できるオープンな空間だが、オーナーは特別価格で食事や買い物を楽しむことができる。
「建てたら超えこひいき」を徹底
さらに、毎月のようにオーナー向けイベントを開催している。たとえば、ママカフェ、カレーパーティー、練り切り和菓子アート教室、地曳き網漁、チャリティーオークションなど。どれも常に満員だという。
「“建てたら超えこひいき” が納得流のやり方。イベントは一見さんお断りで、オーナーさんだけの聖域。常日頃からオーナーさんに関わる。そうすることで、オーナー同士のコミュニティが広がり、絆が生まれる」。そして、彼らの楽しそうな暮らしぶりを眺め、いつかはオーナーになりたいというファン予備軍も自然増殖する。
地引網漁やカレーパーティーなど、ユニークなオーナー限定イベントを頻繁に開催
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